民主法律時報

民法協新人歓迎企画「労働相談入門講座」について

弁護士 喜 田  崇 之

一 はじめに
 1月17日午後6時30分より、民法協新人歓迎企画「労働相談入門講座」が開催された。講師は、増田尚事務局長が務められ、労働者側で労働事件を受任する際の心構え、知っておくべきこと等を中心に話がすすめられた。
 参加者は、新人弁護士に限らず、ベテラン弁護士、労働組合員、司法修習生など、幅広い層の方々が参加され、合計45名の参加であった。特徴的だったのは、司法修習生が多く出席したのと、これまで民法協とは無関係の法律事務所に就職した弁護士も参加していたということであった。

二 講演の内容
 増田先生は、労働事件のそもそもの特性からお話をされた。
 不安定雇用・不当な労働条件を押し付けられているという労働者の状況を指摘し、労働組合の存在意義、団結権等の保障の重要性等を説かれた。続いて、労働をめぐる近時の情勢を、歴史的な法律の制定、政治的な動向等の紹介をしながらお話をされ、労働再規制がなされてきたことが紹介された。
 そして、具体的に労働者の権利を守るために何をすべきか、という観点から、労働組合の存在意義や、格差を是正するために様々な手段を用いて裁判闘争を行うべきであること、裁判闘争の中では裁判所前での宣伝や傍聴支援、公正な判決を求める署名集めを行うことの意味等を述べ、そのような裁判闘争を通じて、労使間の格差を超え、労働者の権利を擁護することが重要であることを説かれた。
 また、個別事件で和解解決する場合、使用者側から口外禁止条項を入れることを要求されることがあるが、このような口外禁止条項を入れることによって会社は違法・不法が隠されることになり、代理人として安易に応じるべきではないのではないか、という話もあった。
 民法協会員は、このような労働者の置かれた状況に対し、弁護士、労働組合、学者が共同して様々な支援・運動・研究を行っていることを紹介された。
 その他にも、近時の特徴的な相談類型についてもお話があり、有期雇用の雇い止め、高年法による継続雇用、退職強要・パワハラ・いじめ等の事件も相変わらず多いことが紹介された。その際、証拠の確保が大事になってくること、録音等の証拠化が重要であると説かれた。

三 懇親会
 その後、懇親会が開催され、25名程が参加した。
 「民法協」という存在を知らない修習生もたくさん出席されており、「民法協」という団体そのものに対する質問等も多数あった。懇親会を通じて、「民法協」という団体の存在と、労働者の権利を擁護する民法協の理念に少しでも共感してもらえたのではないかと思う。少しでも多くの修習生が民法協会員になる、いい機会になったのではないかと思う。

四 結び
 現在、民法協では、このような新人弁護士向けの学習会を年に3回ほど開催している。本来の目的は、新たな会員を確保したり、労働者側に立つ弁護士として重要なスキルを共有すること等であるが、近時、明らかに使用者側事務所の弁護士(会社の法務部担当弁護士等を含む)が参加したりして、講演内容が制限されている状態が続いている。
 もちろん、民法協の存在を広く知ってもらうだけでも学習会には重要な意義があるが、単にスキルやノウハウだけが流出することも避けなくてはならない。
 新人歓迎学習会の在り方をもう一度議論してもよいかもしれない。

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