民主法律時報

2020年権利討論集会 ―― 319名の参加で盛況に終わる

事務局長・弁護士 谷  真介

 本年2月15日(土)、エル・おおさかにおいて2020年権利討論集会を開催しました。全体会のみ、分科会のみの方も含め、合計319名の参加で、近年まれにみる大盛況となりました。

午前の記念講演では、政治学・社会思想研究者の白井聡さん(京都精華大学専任講師)にご講演いただきました。政治学の分野で記念講演をいただくのは2015年の中島岳志さん以来となります。事前には現在の日本の政治体制を俯瞰するようなお話を依頼していました。

白井さんは、冒頭で現在猛威を振るっているコロナウィルスや、大災害への安倍政権の対応について触れ、政権は無策であるどころか、これに乗じて例えば災害派遣に向かないオスプレイをアピールしたり、緊急事態条項導入を目論んだり等、利用することしか考えていない、国民の命や暮らしにはそもそも興味が無いのだという、衝撃的な評価から話を始められました。さらにモリ・カケ問題や桜を見る会に表れている国政私物化こそが、現政治体制の状態(いわば末期の状態)を端的に示していると評されました。その上で政治体制を維持するために、戦前は天皇制を軸とする家族的国家感を、戦後はアメリカへの盲目的追随を「国体」として用いてきたことを、事象や具体例をあげながら論じられました。

普段民法協の活動では、安倍政権の市民・労働者に対する攻撃について一つ一つ実態から反論し、あるべき社会をつくるために活動をしていますが、安倍政権が各政策を強引に推し進める原動力がどこにあるのかについて、戦前・戦後の政治体制や、天皇制やアメリカとの関係等大きな視点で考える良いきっかけになったと思います。参加者からも視点が新鮮で興味深かったとの感想が多く寄せられました。90分の講演では中々伝えきれないところもあったかもしれませんが、ご興味をもたれましたらご著書を手にとってみてください。

その後全体会では、5月に大阪地裁堺支部で判決を迎えるフジ住宅ヘイトハラスメント事件、現在最高裁に審理が係属している建設アスベスト訴訟、中東海域への自衛隊派遣の問題と、3つの特別報告がありました。その後、「パワハラ指針全面改訂とハラスメント禁止立法を求める決議」、「『表現の不自由展・その後』をめぐる自治体首長等の不当な言動及び文化庁の補助金不交付決定を批判し、同交付手続の明確化、透明化を求める決議」、「自衛隊の中東海域への派遣に抗議し撤回を求める決議」を提案し、いずれも採択されました(採択された集会決議については民法協のホームページに掲載しています)。

午後からは8つの分科会に分かれて活発に討論を行いました。集会冒頭の萬井会長の挨拶にもありましたが、権利討論集会の分科会をみれば、現在日本が抱える労働問題や民主主義に関する課題がみえてきます。今年は、非正規雇用に関する均等待遇や「雇用によらない働き方」、ハラスメント、外国人労働、表現の自由などについて、民法協らしく実態・実践の報告と運動課題が活発に議論されました。いくつかの分科会では、グループディスカッションや模擬団交(寸劇)形式を取り入れるなど、参加者自身が実践する場にもなったものと思います。中でも、第3分科会(「雇用によらない働き方」)では、フランチャイズやプラットフォームビジネス、クラウドソーシングなどで就労する方の連帯、組織化等が議論され、本集会をきっかけに民法協でも動きを模索できればと思っています。

終了後の懇親会にも約100名の方が参加され盛大なものとなりました。会員労働組合や争議を闘っている方々、過労死家族の会、新人弁護士・修習生など、元気の出る発言が続き、次なる闘いの英気を養うことができました。

こうして民法協の最大行事を終えたわけですが、今後も6月4日に予定している解雇の金銭解決制度に関する法律家団体共催集会や、4月・6月と2回にわたる労働法研究会など、民法協の企画は目白押しです。ぜひ権利討論集会で得たものを各職場の運動や事件活動で活かし、来年2月にまた皆様とお会いしましょう!

※新型コロナウイルス感染拡大を受け4月の労働法研究会と6月4日の法律家団体共催集会は中止(延期)としました。
(4月付記)

 

分科会報告

第1分科会
 討論・労働委員会をどう闘うか?(報告:弁護士 足立 敦史)

 第1分科会は、二部制で、前半は府労委(アクアライン事件)、後半は中労委(全受労NHK地域スタッフ団交拒否事件)を題材に、労働委員会の闘い方と手続についてパネルディスカッションと意見交流を行った。参加者は46名であった。
 前半のパネリストは、弁護団の愛須勝也弁護士と大阪府労委の労働者側参与(委員)川辺和宏氏で、司会は、原野早知子弁護士が担当された。
愛須弁護士からは、事件の事案及び手続選択の説明と、事件の顛末である未払い賃金訴訟提起、会社の報復人事と監視カメラ設置、救済命令申立から責任逃れのための会社破産に至るまで、壮絶なやりとりの説明があった。
川辺氏からは、府労委の申立から命令までの流れに沿った注意点の解説があった。申立段階で、大阪では労働者委員の指名が認められており川辺氏に事前相談すべきこと、調査期日(主張)段階では、公益委員や事務局は、労働法制・労使関係を理解していないこともあるので分かりやすい書面を作成する必要があること、不利益取扱い(1号)事案では不当労働行為該当性の主張立証に気を付けること等、どれも実務に直結する解説がなされた。
その後、ABCラジオ・スタッフユニオン弁護団、当該組合からの勝利命令報告を共有し、質疑応答となった。会場からは、「命令までが長い」等の感想や、和解のタイミングや命令書の交付方法などについて質問があった。
 後半のパネリストは、弁護団の井上耕史弁護士、全受労兵庫県協議会議長の岡崎史典氏、中央労働委員会の元労働者委員の岸田重信氏で、司会は、西川大史弁護士が担当された。
井上弁護士、岡崎氏からは、事件の概要と争点、府労委命令を維持するための工夫、中労委労働者委員とのコミュニケーションの深化(堺労連の坂元氏のサポート)等の説明があり、府労委から最高裁勝訴まで7年にわたる闘いの覚悟と苦労の伝わるものであった。
岸田氏からは、中労委での申立から命令までの流れに沿った注意点の解説があった。委員には地労委の命令書、最終陳述書以外の書面、書証は配布されないので重複になっても重要なことは再度書く方がいいこと、労働者委員とのコミュニケーションが大事で本音で話し合える関係を築いておくこと、調査期日段階では、公益委員を追及せずに説得して味方につける必要があること等、こちらも実務に直結する貴重な説明がなされた。
その後、エミレーツ事件中労委勝利命令の報告を受け、質疑応答となった。会場からは、中労委での闘い方のポイントや、和解しても使用者が合意内容を守らない場合どうするか等の質問があった。
 労働委員会の闘い方を具体的に把握できる得がたい機会となった。

第2分科会
 均等待遇を実現しよう(報告:弁護士 冨田 真平)

第2分科会には42名が参加し、「均等待遇を実現しよう」というテーマの下、様々な報告・議論を行いました。
前半は、まず河村学弁護士から4月1日から施行される働き方改革関連法の均等・均衡待遇について規定、ガイドラインの解説がありました。特に説明義務が新たに規定されたことから、各手当の趣旨目的などを使用者に書面化させることが重要であるとの指摘がありました。
その後、現在行われている労契法20条についての各裁判について、当事者からの報告・質疑が行われました。大阪高裁でアルバイトにも賞与を認める逆転勝訴判決が出された大阪医科大学事件、154名もの一斉追加提訴が行われた郵政事件、派遣元無期社員に対しては交通費を支払いながら派遣労働者については交通費の支給が無いことから派遣労働者にも交通費を支払うよう求めた事件、定年前社員に対して支払われる賞与や各手当を定年後継続雇用社員にも支払うよう求めた近畿オイルサービス労契法20条事件、最近提訴された南海バス事件について当事者の方からの報告、質疑が行われました。
さらに、質疑の中で、非正規職員について支払われていない手当について基本給に含まれているとの主張がなされるケースが多い、非正規労働者に支給されていない手当についてカットされたという正規職員からの相談もある、など各地の現状についての報告がなされました。
後半では、組合の取組として、3つの組合からの取組の報告がありました。建交労関西合同支部大陽液送分会からは、発注元労働者と下請労働者の労働条件の格差が問題となり現在対応を検討している旨の報告、金融ユニオンからは一時金や賃金などについての取組の報告がありました。また、KBS京都労組からは今までの長年の取組の歴史や現在の取組などの報告があり、均等待遇を実現することが正社員化につながることなどの報告がありました。
最後に、現在作成中の均等・均衡待遇についての説明義務を活かした要求書のひな形について紹介し、これを使って、企業側が論理構成を整える前に早期に各手当や基本給、賞与についての説明を書面化させようという提起がなされました(このひな型については近日中に民法協で何らかの形で公開予定です)。
全体を通じて、今後の取組も含め充実した報告・議論がなされました。

第3分科会
 新しい連帯がモノをいう!  「雇用によらない働き方」ユニオン活用法(報告:弁護士 西念 京祐)

第3分科会のテーマは、「新しい連帯がモノをいう! 『雇用によらない働き方』ユニオン活用法」でした。雇用によらない働き方を取り上げた分科会は、昨年に続き2回目です。問題点の把握や問題意識の共有をテーマとしていた昨年の分科会から、今年は、一歩進んで、ユニオンを結成して状況の改善に取り組んでいる多くの当事者が参加し、経験を報告し合い、今後に向けた展望を議論する貴重な機会となりました。
雇用によらない働き方は、IT技術を活用することによる新しい柔軟な働き方であるとして取り上げられることがあります。しかし、「雇用」の外側に位置づけられることで、労働基準法や最低賃金法など、これまでに労働者が獲得してきた働く者に対する保護が及ばないという問題があります。
そのような環境を改善するためには、働く者同士が連携をとって、一緒に声を上げていくということが極めて重要になります。労働組合法上の労働者に当たるのだとして、ユニオンを結成し、団体交渉を通じて要求を実現していく取組みが注目されるのです。
分科会では、まず、ウーバーイーツユニオンの取組みについて、東京から駆けつけて頂いた川上資人弁護士および近畿在住の2人の当事者から報告を受けました。プラットフォーマーがアプリを通じて仕事をマッチングさせる、雇用によらない働き方問題の象徴とも言える形態で働く当事者のユニオンです。アプリで始められる仕事の手軽さに、ポケモンGOの延長のような気分で始めていたけれど、ユニオンの活動に関する情報発信を見て、労災の保障がないことなどのリスクを知ったという当事者さんのお話が大変印象に残りました。
他にも、ヤマハ英語講師ユニオンからの雇用化に向けた交渉の報告や日本音楽家ユニオンからの組織拡大の工夫に関する報告、そして、コンビニ加盟店ユニオンや楽天ユニオンなど、事業者性が認められるケースであっても、本部との顕著な力の差がある中で、団結して交渉することの重要性や、公正取引員会を活用する戦略についてなど、興味深い議論が交わされました。
互いに、他のユニオンが交渉や人員拡大においてどのような工夫をしているか、そのノウハウを聞いて、今後の活動に役立てようとする実践的で刺激的な学習企画になったものと思います。
分科会には39名が参加しました。

第4分科会
 いのちと健康を守る職場を実現しよう!(報告:弁護士 上出 恭子)

第4分科会では、「①ハラスメントのない職場をどう実現するか~具体的事例の報告、パワハラ防止法・指針を知ろう~  ②労基署をどう活用するか~労基署の現状を踏まえて~」という二つの柱で報告・討論を行いました。
昨年に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が改正され、今年4月から、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となり、今年1月 日付けで事業主の措置義務を具体化する指針が公表されるなど、ハラスメントに対する問題関心がこれまで以上に高まる背景があったこと及び労基署の現状を踏まえた活用法という実践的なテーマを設定したことで、50名という多数の方に参加いただきました。
前半の「ハラスメントのない職場をどう実現するか」では、昨年、広く報道されたトヨタのパワハラ過労自殺事件を担当した立野嘉英弁護士より、直属の上司から「こんな説明ができないなら死んだ方がいい」といった苛烈なハラスメントに被災者が曝された実態と一旦症状が治まったかのように見えて職場復帰をした際の職場環境の配慮の重要性の指摘がありました。
大阪職業病対策連絡会の藤野ゆきさんからは、支援をされてきたパワハラ被害者の労働者の方に対して質問形式で、ハラスメント被害の実情等についてのリアルなお話をお聞きしました。新聞労連近畿地連の伊藤明弘さんからは日本MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)が実施をしたセクシャルハラスメントWebアンケートに基づいた報告があり、多数の被害報告があっても実際に相談をしたという割合が非常に低いという指摘がありました。
以上のハラスメント被害の具体的な報告を受けて、岩城穣弁護士からハラスメント防止法、指針の概要の解説、西川翔大弁護士から近時のハラスメント事案の裁判例報告があり、法的知識の解説がされました。
耳原病院労組副執行委員長の横山健さんからは、職場内で、労使双方が委員として構成をするパワハラ防止委員会・セクハラ防止委員会の設置をしてハラスメント事案の解決に取り組むという画期的ともいえる取組の報告をいただきました。
後半は、もう一つの柱である労基署の活用法について、労働行政ウォッチャー小山かおるさんから、労働行政の組織構成、職員の定数の推移といった背景から、現状、労基署がどうなっているのか、また、大阪、愛知等の大規模労働局で労災事務処理の集中化の実態、その弊害の一つとして労働時間の認定の厳格化といった指摘がありました。
最後に、現在、過労死事案の訴訟の当事者の参加者から訴えがありました。
このように非常に盛りだくさんな内容で、今後のハラスメント防止の取組を考える上で必要な法的知識、また実例を知っていただく機会となりましたら幸いです。

第5分科会
 初心者歓迎! 増加する外国人労働者からの相談に対応しよう!(報告:弁護士 大久保 貴則)

第5分科会では、「初心者歓迎!増加する外国人労働者からの相談に対応しよう!」と題して、外国人労働者の問題について議論しました。労働組合やマイグラント研究会のメンバーなどが参加し、参加者は25名でした。
分科会は2部構成で行い、外国人の労働相談の特殊性や注意点等を重点的に議論しました。
第1部では、外国人労働者の相談実績が豊富な首都圏移住労働者ユニオン書記長の本多ミヨ子氏から、外国人労働者からの労働相談において注意すべき点などを実際の事例も交えてお話しいただきました。外国人労働者は、日本語がうまく話せない・読めない、日本の法制度等がわからないなどの理由から、契約書がそもそも作成されないケース、契約書があってもそれは「入管提出用だ」と言われ実際には異なる労働条件で働いているケースなど、日本人労働者よりもさらに劣悪な条件で就労させられていることを紹介していただきました。
また、外国人労働者から相談を受ける際にまずハードルとなる言葉の問題についても、通訳人を確保するための様々な方策をご紹介いただくなど、外国人労働者を取り巻く事情の説明にとどまらず、まさに「明日から使える」実践的なテクニックも教えていただきました。
第2部では、マイグラント研究会所属の弁護士から在留資格についての解説を行い、外国人労働者問題に対応するために最低限必要な知識を身につけた上で、参加者を6~8人程度のグループに分け、あらかじめ用意した設例について、労働組合としての対応を議論しました。在留資格・期限などの外国人特有の問題のため日本人の場合とは違った検討・配慮が必要となることが、事案を用いて議論することでより深く理解することができました。
さらに、少人数のグループで自由に意見交換することで、出題者が予定していなかった着眼点での議論も行われるなど、外国人労働者の問題を共有する良い機会となりました。
今回の分科会の資料・内容が、これから増加する外国人労働者の相談において活用されることを願っています。

第6分科会
 都構想を阻止! 秋の住民投票をどう闘うか(報告:弁護士 藤井 恭子)

本分科会では、本年11月に住民投票が実施される見通しの「大阪都構想」を阻止するため、私たちがどのような取り組みをしていくべきか、というテーマで討論を行いました。
まず、大阪市をよくする会の事務局次長・中山直和さんに、今回の「都構想」住民投票へ至るまでの経過や、問題点について、解説をしていただきました。
中山さんの解説の中で、「都構想」は大阪市を廃止して二度と「大阪市」に戻せなくするものであり、住民サービスを必ず低下させ、災害支援体制を後退させるという、問題だらけのものであることが明らかにされました。
その上で、大阪日日新聞編集局長で元NHK記者である相澤冬樹さんに、マスコミの視点から「維新はなぜ強いのか?」をテーマに講演をしていただきました。
維新の強さとは、大阪の「お笑い100万票」無党派層を取り込んだだけでなく、維新に鞍替えした保守議員(自民党議員)が地元で足腰の強い活動をしたことで、無党派層を維新支持者に定着させたことにある、という解説にはなるほどと思わされました。
さらに、維新と安倍政権は、変化を求める市民感情に訴えかける手法が共通しており、これに対して野党が弱いのは、批判に終始して夢を語らないから支持を得られないと指摘されました。ではどうやって市民に「都構想」反対票を投じてもらうのか。
相澤さんが導いた結論は、住民投票で都構想反対票を投じてもらうためには、市民の感情に訴えるしかない、というものです。
わかりやすく市民の感情に訴える「大阪市をなくすな」といったフレーズを使い、安倍政権や維新を上回る「夢」「希望」を語ることが、安倍政権や維新に勝つ方法である、という主張は非常に説得力がありました。
その後、大生連の大口さん、大阪市学校園教職組の宮城さん、大阪市労組の井脇さんから、市民あるいは現場で働く立場として、維新政治と都構想が市民に何をもたらすか、という観点から発言をしていただきました。
さらに参加者全員で討議を行い、最後に、大阪自治労連の荒田さんより、「大阪市がなくなる」という真実を伝えることで大阪市民にもっと運動を広げていこう、と行動提起をしていただいて終了となりました。
11月の住民投票まで、あまり時間がありません。今回の分科会で出された様々な意見は、すぐにでも着手するべき運動のために参考になるものばかりだったと思います。
特に相澤冬樹さんが述べた「大阪市民の感情に訴える運動」「維新を上回る愛・夢・希望を語ること」という点は、市民を投票行動へ向かわせるために必要な視点ではないでしょうか。
本分科会に参加された皆さんが、都構想反対運動に今回の議論をフィードバックして、運動を盛り上げていくことを願っています。
分科会参加者は32名でした。

第7分科会
 反貧困・社会保障運動と労働運動の連帯のために(報告:弁護士 清水 亮宏)

第7分科会では、「反貧困・社会保障運動と労働運動の連帯のために」とのテーマで討論しました。当日は、学者・労働組合・弁護士・学生など、様々な立場から 25名に参加いただき、今後の展望を議論する貴重な機会になりました。
分科会では、まず、県立広島大学の志賀信夫さんから、「反貧困運動と労働運動の接点」と題してご報告いただきました。貧困の概念を問い直す必要があること、貧困・不平等・格差をなくすために資本・賃労働関係という視点が必要であること、労働者階級の連帯によって資本・賃労働関係に介入していく必要があることなどについて、学術的な観点からわかりやすくご報告いただきました。
続いて、NPO法人「結い」で活動されており、市議会議員のご経験もある片田正人さんから、「要求を実現するための市民運動~NPOの実践から」と題してご報告いただきました。議員活動を通じて感じた政治・行政の限界を踏まえつつ、市民がどのように行政施策にコミットすべきか、どのようなコミットが有効か、リアルな体験を踏まえてご報告いただきました。
その後、①イタリアの年金者組合について、全日本年金者組合大阪府本部執行委員長の加納忠さんから、②年金引下げ訴訟の概要と訴訟の展望について、喜田崇之弁護士から、③生活保護裁判基準引下げ違憲訴訟・障害のあるひとり親に児童扶養手当の支給を求める裁判について、清水亮宏弁護士(筆者)から報告がありました。
最後に、報告者と参加者を交えて、反貧困・社会保障運動と労働運動の連帯のためにどのような運動が望まれるのか、私たちの課題は何かを議論しました。“勝てるゴールを設定して勝ち癖を付けるべきでは”“市民に貧困問題に関心を持ってもらうための宣伝が必要ではないか”“労働組合を交えた社会保障運動の構築が必要では?”など、活発な意見が飛び交いました。
反貧困・社会保障運動と労働運動が連帯するきっかけになる良い分科会になったと思います。

第8分科会
 表現の自由が危ない! 「表現の不自由展・その後」のその後(報告:弁護士 辰巳 創史)

第8分科会は、「表現の自由が危ない!『表現の不自由展・その後』のその後」と題して、いつもの憲法9条ではなく、憲法21条の表現の自由をテーマにして、3部構成で行いました。参加者は24名でした。
第1部では、そもそも「表現の自由」って何?なぜ重要な基本的人権と言われているの?という基本的なことを、71期(2年目)のフレッシュな若手弁護士コンビが、分かりやすくスライドを使って解説しました。とても分かりやすく、市民講座向けにまた使いたくなるスライドでした。私は、早速翌日の憲法カフェで使わせてもらいましたが、好評でした。
メインの第2部では、「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれた際に再開を求めて仮処分を行い、勝利的和解を勝ち取った弁護団から、弁護団長の中谷雄二弁護士をお迎えし、緊迫した当時の状況等についてご講演いただきました。あいちトリエンナーレの一連の事件は、ドキュメンタリーなどでテレビでも取り上げられていましたので、知ったつもりになっていましたが、大村秀章知事や津田大介氏のヒーロー像は作られた虚像であり、実態は全然違うのだということがよく分かりました。
その後、地元の大阪で起きている表現の自由が問題となった事件についても、4人の方にご報告いただきました。枚方市職労のニュースへの市当局の干渉、吹田市の行政財産の目的外使用の使用料に対する規制強化、松原民商まつりの公園使用不許可など、自治体による表現の自由の侵害の他、街宣への干渉・妨害事例が報告されました。
第3部では、出席者24名全員に参加いただき、2つのグループに分かれて、それぞれ異なる事例について自由に検討してもらいました。1つの問題を例に挙げると、児童ポルノは法で禁止されているが、ある自治体が条例で児童の裸を描いた「絵」も規制の対象として刑罰を科することとしたが、表現の自由の観点から問題はないか?というものです。いろいろな角度から、様々な意見が出て、表現の自由をじっくり考える機会になったと思います。
参加者は最少の24名でしたが、全員参加で熱く盛り上がった分科会でした。

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