民主法律時報

事後対策よりも予防 労働組合の力が必要 ―民法協・ハラスメント防止法学習会―

化学一般関西地方本部
安全衛生対策部
事務局 村 田 浩 久

 2019年5月に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」(ハラスメント防止法)が成立、2020年6月1日に施行されました。そして、今年4月1日からは中小企業にも適用されています。

5月10日に開催された民法協主催の「ハラスメント防止法」学習会は、あらためて防止法について学び、ハラスメント防止にとどまらず、ハラスメント撲滅の取り組みをいっそうすすめる必要があることを認識する良いきっかけとなりました。

学習会はエル・おおさかで開催され、44名が参加しました。きづがわ共同法律事務所の冨田真平弁護士が講師となり、「ハラスメント防止法と指針」について、パワハラの定義や類型、使用者責任や労災との関係、対処法などが判例の紹介とともに解説されました。また、おおさか労働相談センターの福地祥夫事務局長からは労働相談の実態が紹介されました。

ハラスメント防止法により「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と法律で初めてパワハラが定義されています。そして、2020年1月には「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」が示されています。化学一般関西地本でも法律が施行されたころに学習会を行いましたが、そのとき印象に残ったことは「この指針には企業側が逃げ道に使える問題点がある。労働者にとって使えるところを活かしていこう」という点です。そして今回、「類型や定義に当てはまらないからと企業側の逃げ道に使わせてはいけない。その言動にはどんな目的があったのか、本当に業務上必要だったのかを追求すれば逃げ道は塞げる」ということを学びました。

福地事務局長からは、「以前は解雇相談が多かったが。近年解雇相談は減り、ハラスメント関連の相談が多くなっている」と報告がありました。「企業側は巧妙になり、不当解雇と言われないように自主退社に追い込もうとしているケースも少なくない」とのことです。大阪府労働環境課による調査では、パワーハラスメント対策義務化を知っている事業所は83.8%で、対策を講じている事業所は66.4%となっており、企業規模が小さいほど認知も対策も不十分であるという状況が明らかになっています。

防止法が施行されて以降、化学一般に加盟している労働組合からも就業規則変更の報告や相談があり、とくに昨年秋ごろから今年春にかけては、育児介護休業法改正もくわわり、その件数は増えました。

「パワハラが起こったらどう対応しようかではなく、起こさせない、起こさない。そのために組合が力を発揮しなければいけない。企業が形だけ対策を講じているなら機能させるように変えていくのが組合の役割です。パワハラは職場環境の問題なので賃上げや一時金交渉と同じく義務的団体交渉事項です。企業はこの問題から逃げられません。頑張りましょう」という学習会の締めの言葉を実践していきたいと思います。

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