民主法律時報

2020年度第1回労働相談懇談会報告

おおさか労働相談センター 福地 祥夫

 今年度の第1回労働相談懇談会を2019年12月13日(金)国労会館に於いて開催し、6単産・7地域・その他、弁護士、大学生など33名の参加がありました。学習テーマは「解雇・雇い止めの闘い方と解雇の金銭解決制度の問題点」で講師は鎌田幸夫弁護士でした。

最初に「解雇の金銭解決制度導入」の企みの歴史的経過について説明があり、1999年 月の小渕内閣、2005年9月の小泉内閣に続く、3度目の試みであること。これまでの2度の議論では広範な人々の反対で法案化を阻止してきた歴史的事実を振り返りました。その上で、今回の安倍内閣による法制化議論の現状と議論されている制度の中身について学習を行いました。

いま現在行われている検討会では、「解雇の金銭解決制度導入」の是非について議論しているのではなく、導入を前提に労働契約解消金請求権の発生要件や労働契約解消金の算定方法など法技術的な論点を検討しているとの指摘がありました。

安倍内閣の考えは、解雇された労働者の選択権を増やし、復職を希望しない者の選択肢を増やす労働者救済制度であり、解雇基準を緩和するものではないというものですが、労働契約解消金の算定方法など金銭解決の基準が出来てしまうと、使用者はコスト面での予測が容易になり、解雇しやすくなるので、労働者救済にはならないこと、今回の検討議論では、金銭解決の申立権は労働者のみとされているが、将来的には使用者側からの金銭解決申し立てを求める議論に繋がること、などが明らかになりました。

最後に講師の鎌田弁護士から、職場復帰を認めないことの不当性を訴え、就労請求権の法制化を求めること、労働局のあっせんの在り方と労働審判を充実させること、労働者を泣き寝入りさせない労働相談活動と団交および弁護士との連携、そのための労働組合の重要性など、あるべき労働者救済制度が強調されました。

解雇・雇止めに関する労働相談は多く寄せられています。そうした相談には解雇・雇止めの不当性、家族を含めた生活や働く権利を守るために、組合加入と団体交渉による職場復帰を呼びかけていますが、職場復帰は望まずに、金銭的補償を第1の要求に挙げる相談者が多くいます。

しかし、そうした流れの中でも、労働組合として「不当な解雇・雇止めは許さない」という立場を堅持して問題の根本である不当性を訴え、同時に職場を失った労働者の悩みと苦しみに寄り添いながら、問題解決に向けた道筋を探し出す努力と対話を続けることが、労働組合としての使命であること。また、いま議論されている3度目の導入の企みを阻止するためには、地域宣伝や署名運動などを通じた労働組合と市民の広範な共同の取り組みが重要であることを改めて認識した学習会でした。

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