弁護士 谷口 真由
1 はじめに
2026(令和8)年7月17日、株式会社絆ホールディングス(以下「絆HD」といいます。)およびグループ法人4社(NPO法人リアン、株式会社JOBconnect、株式会社リベラーラ、株式会社レーブ)に不当に一斉解雇された就労継続支援A型利用者や職員ら計12名が原告となり、絆HDおよびそのグループ法人4社並びにその代表者や取締役等に対し、大阪地方裁判所に提訴いたしました。本訴訟において、雇用主であるグループ法人各社に対する雇用契約上の地位確認とバックペイの支払いを求めるとともに、「36か月プロジェクト」と称される違法なスキームを組織的に主導・管理した絆HD、グループ法人、および意思決定に関わったその役員らに対し、計約5250万円の損害賠償を求めています。
2 事案の概要
グループ法人4社は、障害のある利用者に就労の機会や訓練を提供する「就労継続支援A型事業」を営んでいた事業者です。グループ法人4社は、障害者を一般企業に就職させ、定着させた実績に応じて支給される「就労移行支援体制加算」という公的制度の制度趣旨を悪用し、莫大な加算金を不正に受給していました。すなわち、実質的な支援や就労実態がないにもかかわらず、利用者を形式的に別会社に「一般雇用」した形にし、6か月が経過して受給要件を満たした途端に退職させ、再び元のA型事業所の利用者として受け入れ、そしてまた同一の利用者を形式的に「一般雇用」にした形にして、6か月経過した時点で加算金を受給するということを繰り返す、通称「36か月プロジェクト」というスキームを構築し、実行していたのです。これは、利用者の一般就労後に着実な定着につなげるような継続的な支援体制が構築されている事業所を評価するという就労移行支援体制加算の制度趣旨から大きく逸脱した違法なスキームです。
そして、このスキームを通じて、親会社である絆HDは、国や自治体から支払われる訓練等給付金の20~60パーセントを「業務委託費」名目で一元的に吸い上げ、莫大な収益を上げていました。
被告らは、大阪市からの文書による改善指導や算定ルールの厳格化を無視して過大請求を継続した結果、大阪市から指定取消処分を受け、総額約110億円にのぼる給付金等の返還を求められました。処分が決定した令和8年3月27日、被告らは利用者や労働者に十分な説明も協議も行うことなく、何らの解雇回避努力も利用者の障害特性への配慮もせずに、すべての事業所閉鎖と約1500名に上る利用者・労働者の一斉解雇を決定したのです。さらに、被告らは、2026(令和8)年6月22日に会社更生手続および破産手続の申立てを行い、保全管理命令が出るに至っています。
3 訴訟の意義
原告らをはじめとする、被告らによって一斉解雇された利用者・労働者らは、突如として生活の糧を奪われただけでなく、本事件が大々的に報道されたことにより、「絆HDの事件の関係者である」と色眼鏡で見られ、実際に転職活動に支障が生じており、原告らは精神的苦痛等大きな損害を被っています。障害福祉サービス事業所を運営するものとして適切なサービスを提供しなかったうえに、雇用主として、障がいのある利用者や従業員らに対して何らの配慮もせず、安易に一斉解雇に踏み切った被告らの一連の行為は、断じて許されません。
本訴訟を通して、今回の整理解雇が違法無効であることを明らかにするとともに、「36か月プロジェクト」というスキームで障害福祉サービスの加算金制度を悪用して、利用者や従業員らの知らないところで利益をむさぼるだけで、利用者らに対する支援をないがしろにしつづけた被告らの責任を追及するなかで、原告12名をはじめとした障害者らの人権と生活、雇用を守るとともに、適正な障害福祉のあり方、障害福祉のあるべき姿とはなにかを問うていく所存です。
(弁護団は、鎌田幸夫、須井康雄、楠晋一、清水亮宏、佐久間ひろみ、各弁護士と谷口。)








