民主法律時報

東大阪セブン-イレブン事件 大阪高裁不当判決報告

弁護士 加 苅   匠

1 不当判決

2023年4月23日、セブン-イレブン東大阪南上小阪店オーナーの松本実敏氏とセブン-イレブン・ジャパン(株)の間で、セブン-イレブンが松本氏の顧客対応の異常性等を理由としてコンビニフランチャイズ契約を解除したことの有効性が争われた控訴審裁判について、大阪高裁第2民事部(清水響裁判長)は、本件解除は有効であるとし、松本氏の控訴を棄却する不当判決を言い渡しました。

2 判決の問題点

(1) 原判決の判断を維持
控訴審は、松本氏の接客対応がフランチャイズ契約で定める「フレンドリーサービス」に反して本部のブランドイメージを低下させるものであり、これにより当事者間の信頼関係は破壊され、かつ催告期間内に松本氏が接客対応に対する問題点を本部と共有し、具体的改善方法を提示したとは言えず、催告に応じたものとはいえないとして、本件解除を有効とする第一審の判断を維持しました。

以下、控訴審判決の大きな問題点を指摘します。

(2) 常識はずれの「コンビニ感」
「常識的に考えて、他のセブン-イレブン店舗で購入したコーヒーカップを本件店舗のごみ箱に捨てること…が、『迷惑行為』になるなどとはいえないはずである」。

これは、家庭ごみを持ち込む者に対して、松本氏が毅然とした態度で対応し、ゴミを持ち帰るよう注意した件に関する控訴審判決の一節です。他のセブン-イレブン店舗で購入した商品であろうと、そのごみを外から持ち込めば「家庭ごみ」にほかなりません。コンビニのごみ箱は、購入した商品をすぐに食べたり、使用できるようにするために設置されているものであって、公共のごみ箱ではありません。毎日何回ものゴミの処分やごみ箱の清掃等にかかる手間や費用の負担は全てオーナー持ちです。常識的に考えて、家庭ごみの持ち込みを一律禁止としているコンビニのごみ箱に、家庭ゴミを持ち込むことが「迷惑行為」ではないなどとはいえません。

このほかにも、「(迷惑客を)注意する際にも、常識に照らし、本部の接客イメージを傷つけないような言動(苦情申立ての対象とならないような言動)が求められる」など、コンビニでは、迷惑客に対してもその者からクレームを入れられないように低姿勢を貫くべきであるかのような判断がちりばめられています。

以上から、裁判所の「コンビニは平身低頭であるべき」かのような常識はずれな考えが見て取れます。迷惑行為や理不尽な要求等によりオーナーが苦しめられている実態を理解しているとはいえません。

(3) 契約解除に至る背景事情の無視
本店舗では開業当時から一定のクレームがあったにもかかわらず、時短営業が始まるまでクレームについて本部から注意指導がなされることはありませんでした。本部にとっては、クレームは一定数あっても、売り上げのよい本店舗をつぶす必要はなかったのです。

ところが、松本氏が時短営業を始めるとすぐ、クレームを持ち出してきて契約解除を示唆したのです。契約解除に至る背景事情を見れば、セブン-イレブンの真の意図は、物言うオーナーの排除にあったことは容易に推測できます。ところが、本判決は、本件の背景・真の狙いについて、全く考慮していません。

3 これからの闘い

本判決は、コンビニオーナーの過酷な実態やカスタマーハラスメントが問題されている昨今の潮流に逆行する判決です。原告・弁護団は、本件解除を無効とする最高裁判決を勝ち取り、全国のコンビニオーナーが自由に本部に対して要求することができるような健全平等な環境をつくることができるよう、全力を尽くします。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

(弁護団は、大川真郎、坂本団、西念京祐、喜田崇之、加苅匠)

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