民主法律時報

大阪高裁もダイキンの大量雇止め容認――大量解雇が労働者の「選択」の結果とする不当判決

弁護士 村 田 浩 治

1 事案の概要
 ダイキン工業(株)堺製作所では、1990年代初めから偽装請負の労働者が就労していた。形式上は請負会社が雇い主であるが、製造ラインではダイキン社員と混在して、ダイキン社員から直接に指揮命令を受け、長い者では20年以上も就労していた。
 2007年11月、ダイキンは、大阪労働局から「偽装請負を是正せよ」との行政指導を受け、請負社員240名を直接雇用した。もっとも、その契約は、2008年3月1日から最長2年6か月(当初6か月、その後1年契約を2回まで更新)という説明であった。これを拒否すればダイキンで働けなくなるという状況のもとでほとんどの請負社員が、有期間社員として継続してダイキンで就労をする道を「選択」せざるを得なかった。
 ダイキンは、2年6か月後の2010年8月31日をもって203名の元・請負社員を雇止めにした。
 この雇止めは無効だとして、偽装請負時代から通算して8~16年働いていた4名が大阪地裁に提訴した。
 大阪地裁は、2012年11月1日、雇い止めを有効として請求を棄却した。ダイキンとの直接雇用契約の際に、2年6か月が上限だと合意しており、継続雇用に対する期待権はないという判断だった。

2 控訴審の経緯
 大阪高裁では、地裁判決が更新上限の合意のみを根拠としたことを批判し、更新の上限の合意が契約書に明記されていないこと、就業規則の上限規定は契約締結後に制定されたこと、偽装請負時代から継続就労の期待があり更新上限合意だけで継続雇用の期待を否定できないこと、偽装請負時代を無視して継続雇用の期待を否定することは信義則に反すること等の主張を補充し、本久洋一國學院大學教授の意見書を提出した。
 しかし、大阪高裁は、2014年3月26日、一審判決を維持し、再びダイキンの雇い止めを有効とする不当判決を下した。

3 大阪高裁判決の不当性
 (1) 偽装請負時代の雇用と直接雇用の徹底した区別
 控訴審では、ダイキンでの直接雇用は偽装請負時代の雇用を引き継いだものであり、その継続雇用の期待権は保護されるとの主張を補足したが、これに対して大阪高裁は次のように判断した。
 「被控訴人と控訴人らとの間に指揮命令関係があったとはいえ…黙示の労働契約が成立していたとは認められない」…「請負会社と控訴人らとの間に派遣労働契約のみが存在したのであって、この派遣労働契約は本件直用化によって締結された本件労働契約とは、使用者が異なっており、また被控訴人と請負会社の間では何らかの資本関係、株主構成、役員には共通性があるなど、実質的に使用者が同一ということも出来ない。しかも本件直用化に当たって、個々の労働者に本件労働契約を締結するか、従前の派遣労働契約を継続するかについての選択権が与えられており、当該労働者が前者の選択権を行使したからこそ本件労働契約が締結されたのであって、請負会社と被控訴人との間で、従前の派遣労働契約をそのまま承継する法的措置が執られた形跡はない」…「本件労働契約は言わば新規の契約というべきであって、本件労働契約締結時において、控訴人らが、従前の就労実態から本件労働契約に対して将来にわたって契約が更新されるとの期待を有していたとしても、その期待が客観的に合理性をもつものでない」。

(2) フィクションに過ぎない労働者の「選択」を根拠とする不当性
 大阪高裁は、請負会社に残る選択もあったのだから、ダイキンとの契約は全く新規の契約に過ぎないという。しかし実際には、労働者がダイキンで働き続けるためには、2年6か月の有期契約を選択するしかなかった。大阪高裁は、こうした現実を無視して、労働者の「選択」という虚構に依拠したのである。

4 最高裁へ
 当事者らは最高裁へ上告することを決意した。引き続き、ご支援いただきたい。

(弁護団は、豊川義明、鎌田幸夫、城塚健之、村田浩治、斉藤真行、峯田和子、辰巳創史、井上耕史)

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