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決議

コロナ禍での「大阪都構想」住民投票実施に反対し、府民を守る施策を求める決議

維新の会が推進した府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所の統合や住吉市民病院の廃止など、大阪府下の公衆衛生と医療提供体制の脆弱化が、新型コロナウイルス感染症に対する対応を困難にしている。8月21日現在、大阪府民の感染者は7500名を超え、重症患者は70名程度で推移し、病床使用率も相当逼迫している。

コロナウイルス感染拡大は大阪府内の中小零細企業にも深刻な打撃を与えている。インバウンド頼みの「成長戦略」も訪日客激減で脆さがあらわとなった。この間、大阪府は商業振興予算を7億1000万円から3000万円に減らし、大阪市信用保証協会を「二重行政の象徴」として廃止、大阪府信用保証協会に統合して職員を減らしてきた。コロナ対策でも多くの市が実施している無利子融資などの支援も一切ない。全国の政令市と比べても、市民への支援、文化芸術団体への支援などにおいて際立つ貧弱さで、まともな対策を行っていない。他方、維新の会が進めてきたカジノ・IRについては、大阪進出に唯一手をあげた米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同グループがコロナ禍を受けて事業提案書を期限までに出せず、大阪府・市は事業者の選定を当面延期するとしているが、維新の会がカジノ・IRに執着する姿勢に変わりはない。

大阪市には緊急時の備えとしての自治体の貯金である財政調整基金が1300億円あり、他の政令指定都市と比べ大きな貯金を持っている。今こそ国にさらなる財政支出を求めるとともに、大阪府も大阪市も基金を活用した独自のコロナ対策を講じ、府民の生活を守るべきである。

そのような状況下で、大阪市を廃止し四つの特別区に分割する「大阪都構想」の制度案が、2020年6月19日に開催された法定協議会で、大阪維新の会、公明党、自民党府議団の賛成で可決された。大阪府・市の臨時議会で議決されれば、同年11月1日に「大阪都構想」の是非を問う二度目の住民投票が実施される。制度案の中身は、2015年の住民投票で否決された案の「五つの特別区への分割」を四つにするだけであり、大阪市廃止が強行されれば住民サービスは必ず低下する。制度設計を担保する「財政シミュレーション」がコロナ禍以前のものであるとの批判を受け、8月11日に「更新版」が出されたが、依然としてコロナ禍による財政収支への影響を試算せず、大阪メトロのコロナ前の収益を前提にした収入増を組み入れて「特別区は収支不足なし」とする新たな粉飾を行っている。

今求められているのは、コロナ対策の科学的な検証と総点検の上に、これまで壊されてきた命と健康を守る医療や、くらしを支える社会保障、中小企業支援策の再建である。これらに全力を注ぐべきであり、大阪市の廃止・分割に膨大な人員と経費を使っているときではない。住民に分断を持ち込み、それ自体感染症拡大の懸念もある住民投票を、このコロナ禍の中で行う必要はどこにもない。

当協会は、「大阪都構想」、とりわけコロナ禍における再度の住民投票の実施に断固として反対し、大阪府・市に対しては、第一にコロナ感染拡大から府民の命や健康、くらしを守る施策に取り組むことを求める。

2020年8月29日
民主法律協会第65回定期総会

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