1 自民党・日本維新の会は、2025年10月の「連立政権合意書(閣外協力)」に基づき、わが国のインテリジェンス機能の強化を目的としたインテリジェンス・スパイ防止関連法制(基本法、外国人代理人登録法およびロビー活動公開法など)の制定に向けた動きを加速させている。また、「国家情報局」の創設や、諜報・防諜・非公然活動の機能を有する「対外情報庁」の創設、情報要員の養成機関の設置までもが目論まれている。さらに、野党である国民民主党と参政党も、先の臨時国会にスパイ防止法案をそれぞれ提出しており、法案の制定に前のめりの姿勢である。
2 しかし、このような法律を制定すべき「立法事実」は存在しない。2025年8月の政府答弁において、当時の石破政権は、「日本はスパイ天国」という指摘に対して、現時点において情報収集・分析体制の充実強化、違法行為の取り締まりの徹底等に取り組んでおり、「『各国の諜報活動が非常にしやすいスパイ天国であり、スパイ活動は事実上野放しで抑止力が全くない国会である』とは考えていない」としている。すなわち、日本はスパイ天国であるという事実は政府自体が否定しているのである。また、インテリジェンス・スパイ防止関連法制を新たに制定しなくとも、制定されている「特定秘密保護法」や「経済安保法」、「経済秘密保護法」などの関連法によって、既に一定の対応はなされている。
それにもかかわらず、高市首相は、2026年1月19日、衆議院解散を表明した際に、「国論を二分する大胆な政策に果敢に挑戦していくために、有権者の信任を得たい」と述べ、選挙後には、特別国会で予算と税制について議論した後に直ちに着手したい事項として、インテリジェンス機能を高めることを挙げた。立法事実のないスパイ防止法の制定を果敢に推し進めていく意思を表明したのである。
3 インテリジェンス・スパイ防止関連法制を制定することにより、「スパイ」「国防」の名の下に、公権力によって市民が監視され、憲法が保障するプライバシーの権利(13条)、思想・良心の自由(19条)、表現・取材・報道の自由および知る権利(21条)といった基本的人権が侵害される危険が否定できない。また、市民全体を監視する仕組みが作られ、社会の分断や、根拠なき嫌疑がかけられる恐れがある。労働組合運動や市民運動による権力に対する監視行為も制限されることになりかねないし、民主主義にも大きな打撃を与えることになる。
4 民主法律協会は、社会の分断を招き、市民の基本的人権を根底から脅かし、日本を監視国家へと変質させ、労働組合の活動や市民運動を萎縮させ、民主主義に大きな打撃を与えるおそれのあるインテリジェンス・スパイ防止関連法制の制定に強く反対するものである。
2026年2月14日
民主法律協会 2026年権利討論集会



