決議・声明・意見書

声明

特定秘密保護法の強行可決に抗議し、その施行を許さず、廃止を求める声明

  1.  本年12月6日に成立した特定秘密保護法は、民主主義と基本的人権を破壊する憲法違反の法律であり、このような法律を世論の強い反対にもかかわらず強行可決した政府・与党に強い抗議を表明する。
  2.  特定秘密保護法は、幾重にも憲法に違反する、違憲無効の法律である。
     同法は、政府が一方的に「特定秘密」を決め、それが漏れることを防ぐために、それを他に伝えたり、公表することを禁止し、違反した者には最高で懲役10年という重い刑罰を科すことにしている。
     「特定秘密」の中身は曖昧かつ極めて広範囲にわたり、何が「特定秘密」と指定されたのかさえ明らかにされない。そのため、マスコミによる取材活動は著しく制約される。報道・表現の自由と「知る権利」は大きく侵害され、民主主義は機能不全に陥ってしまう。また、「特定秘密」に接触する可能性のある人物を予め身元・身上調査し評価する「適性評価」制度は、市民のプライバシーや思想信条の自由に対する重大な侵害を招く。
     特に労働者の権利に対する侵害は看過しえない。公務員のみならず行政機関から委託を受けた民間企業や大学等の研究機関の労働者も、「漏えい」による処罰対象となりうる。また、「適性評価」制度により、家族を含めてプライバシーや思想信条の自由が侵害される上、調査によって得られた情報により労働者が人事上の不利益を受ける危険性も高い。
  3.  国会での審議経過は前例のない異常なものだった。
     特定秘密保護法案は、10月25日に衆院に提出され、12月6日に自民党・公明党によって強行可決、成立した。国会での審議はわずか40日間に過ぎない。
     国会提出に先立つパブリックコメントは、9万件の意見中8割が反対であり、その後、報道機関・全国の弁護士会をはじめ、多数の市民・団体が法案に反対の声を上げた。
     11月25日に福島県で開催された地方公聴会では7名が全て反対・慎重意見だったにもかかわらず、自民党・公明党は翌26日に衆院特別委員会及び本会議で強行採決した。
     その後、11月29日には、自民党石破幹事長が法案反対のデモについて「テロ行為と同質」とブログで発信し、市民の表現活動を敵視する安倍政権と法案の本質を露わにした。
     国民の反対、不安が大きいことを慮って、12月4日になって急遽「特定秘密」を管理するシステムが提案されたものの、法案の本体が修正されることはなく、12月5日に参議院特別委員会で、議事録には「聴取不能」と記載されているだけで、採決されたかどうか確認することすらできない喧噪と怒号の中で強行採決された。
     廃案・慎重審議を求める世論が高まり、連日抗議行動が大きくなり続ける中、自民党・公明党は、市民・国民の声を聞くことなく、多数を頼みに強行採決を繰り返し、法律を成立させてしまった。民主主義を破壊する暴挙というほかない。
  4.  戦前の日本には軍機保護法や国防保安法を中心とした機密保護法制が存在し、これが言論統制と軍国主義思想を蔓延させる重要な役割を果たして、悲惨な戦争へと突き進む結果となった。
     安倍政権は、国家安全保障会議設置法を成立させ、さらには国家安全保障基本法や集団的自衛権行使を容認する方向での憲法解釈変更を狙っている。特定秘密保護法は、アメリカと軍事情報を共有するために必要な法制だとされているが、それはすなわち、集団的自衛権の名の下に、アメリカと共に武力を行使し、戦争をする国へと突き進むということである。特定秘密保護法は、このような軍国主義化に反対する世論やマスコミ報道を封じ込めることにこそその本質があると見なければならない。
  5.  国が扱う情報は主権者に対して公表・公開されることが本来の民主主義国家のあり方である。情報公開制度や公文書管理制度の整備こそが求められるのであり、仮に国家安全保障の観点から一定の情報について秘密とすべき必要があるとしても、秘密としてはならない範囲や秘密としうる期間の特定・限定、第三者機関によるチェック、情報アクセス権の保障、秘密解除請求手続の整備などが不可欠である。
     それらを全て無視する特定秘密保護法は、思想信条の自由、言論表現の自由を保障し、議会制民主主義を定める憲法に違反しており、したがって、同法による秘密指定や適性評価の実施、処罰はいずれも違憲無効というべきであり、施行期日前に廃止されなければならない。
     当会は、特定秘密保護法の施行阻止と廃止、さらには、民主主義国家としてあるべき情報公開制度等の整備に向けて、特定秘密保護法案に反対ないしは慎重審議を求めた多くの市民らともに力をあわせて、引き続き取り組みを継続する決意を表明するものである。

2013年12月13日
民 主 法 律 協 会
会 長 萬井 隆令

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