2026年1月20日
民主法律協会 会長 豊川 義明
2025年6月27日、最高裁は、2013年から2015年にかけて実施された生活保護基準引下げ処分について、裁量権の逸脱・濫用があり違法と断じた。
この歴史的な判決により厚生労働省は、ただちに、引き下げ前の基準に基づいて支払われるべきであった保護費を支給しなくてはならなくなった。特に、最高裁判決にて違法と判断されたデフレ調整による減額分(-4.78%)については、当該調整分の差額は全て支払われなければならない。
しかしながら、厚生労働省は、違法と判断された減額分全てを追加給付するのではなく、①低所得者(下位10%)の消費実態との比較を行い、当時の生活水準は2.49%下がっていたとして、引下げ額を2.49%としたうえで、4.78%との差額分のみを支給し、②原告に対しては、特別給付金という形式で、上記減額された分を追加給付する、という対応策を公表した。遡及して再減額するに等しい対応である。
かかる対応策は、デフレ調整による減額が違法であると最高裁に断じられてなお、遡及して新たに減額処分を実施するものであり、最高裁の判決の効力をないがしろにするものである。行政機関である厚生労働省が、司法を担う最高裁判決を軽視することは、三権分立の理念の否定にほかならず、憲法および法律に基づく行政の根底を覆すものである。また、原告とそれ以外の生活保護利用者を区別することは、法の下の平等(憲法14条)に反するばかりか、生活保護利用者の間で新たな分断を生むことにつながり許されず、一律での被害救済が必要不可欠である。
さらに、厚生労働省は、違法な生活保護基準引下げ処分が行われた経過を検証し、同様の事態が生じないよう再発防止を図り、生活保護利用者への謝罪をしなければならない。しかし、高市首相は、違法な処分を厚生労働大臣が行ったことをお詫びこそしたものの、生活保護利用者への謝罪はしていない。また、違法な生活保護基準引下げ処分がなされた原因の検証がなされないまま、厚生労働大臣は、一方的に専門員委員会を設置し、上述した最高裁の判決を軽視する対応策を公表したのみで、再発防止策は何も検討されていない。
当会は、2025年8月30日、最高裁判決に基づいた迅速な被害回復及び継続的な検証体制の構築の実施を求めて決議を行ったが、公表された厚生労働省の対応策は、甚だ不十分であるばかりか、最高裁判決を軽視し、最高裁判決の拘束力を否定したものであって、許されない。よって、厚生労働省の対応策はただちに撤回され、全ての生活保護利用者に対し差額について全額支給する迅速な被害回復と、生活保護利用者への誠意ある謝罪、そして、今後二度と同様の事態を引き起こさないよう検証し再発防止に向けて真摯な取り組みがなされることを求める。



