決議・声明・意見書

声明

阪神・オリックス優勝パレードにおける大阪府・大阪市職員に対するボランティア募集等に反対する声明

 大阪府、兵庫県、大阪市、神戸市などで構成する阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード(以下「優勝パレード」という)実行委員会は、本年10月19日、パレード当日の対応に必要な人員を大阪府・市職員からそれぞれ1500人程度ボランティアで募集することを職員に対し通知した。

 上記ボランティアの募集において、大阪府・市から職員に対し、通常の業務による指揮命令系統を利用して上記ボランティア募集に応募するよう呼びかけがなされ、部署によっては管理職から直接メールや職場での声かけがなされている。また、市税事務所職員に対するボランティアへの応募を呼びかけるメールにおいては、各所属ごとに具体的な人数の割当がなされている。

このように、通常の職務命令と同様に使用者の労働者に対する指揮命令系統を利用し、部署によっては具体的な人数まで示した上で応募の呼びかけを行うことは、使用者の優越的な地位を利用してボランティアへの応募を実質的に指示するものに他ならず、実質的に業務命令としてこれらの業務への従事を指示するものである。

3 そもそも上記パレードを「~2025年大阪・関西万博500日前!~」と題して両球団の優勝と全く関係の無い万博と結びつけ、万博の宣伝として利用することは、スポーツの政治利用に他ならない。

4 そして、上記パレードが特定のプロ野球球団の祝賀パレードであることからすれば、ボランティアの業務内容であるパレードの誘導や案内役の業務は、本来的な公務とはいえない。また、優勝パレードには多数の観客が集まるため、観客及び当該業務に従事する労働者自身の安全確保のためにも、これらの業務は、専門的なスキルのある業者に依頼すべきである。

したがって、これらの業務を府・市職員に行わせること自体不適切である。

 また、仮に、府・市職員に対しこれらの業務への従事を指示するのであれば、当然公務として取り扱うべきである。実際、兵庫県・神戸市も、これらの業務をボランティアではなく、公務(休日の振り替え出勤)として扱い、人員を募っている。

しかるに、上記のとおり実質的に業務への従事を指示しながらボランティアとして扱うことは、休日出勤に対する手当の支払いや業務に従事する職員の安全を図るべき義務を免れようとするものであり、使用者としての責務を放棄するものである。

 さらに、実行委員会は、同年11月7日に府立校長・准校長に対して同パレードのクラウドファンディングの教職員への周知を呼びかける依頼を公務の連絡として発出したところ、これらは指揮命令権を濫用した寄付の実質的な強要であるといえ、使用者の優越的な地位を利用して無償で労務を提供させるのみならず寄付を強要するなど断じて許されない。

 当会は、大阪府・市及び実行委員会に対し、パレード当日の誘導・案内等の業務に関し、大阪府・市職員をボランティアとして動員することを中止すること、仮に府・市職員から人員を募って業務に従事させる場合にはこれを公務として扱うこと(具体的には時間外勤務手当の支給、交通費の支給を行い、万が一業務中に職員が負傷した場合には公務災害として扱うこと)、そして教職員に対するクラウドファンディングの周知の依頼は撤回し、今後、府・市職員に対して同様の呼びかけを一切行わないことを求める。

 

2023年11月17日
民 主 法 律 協 会
会長 豊川 義明

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