民主法律時報

京都銀行・魚国の寮管理人偽装請負事件 仮処分申立事件勝利のお知らせ

弁護士 榧野 寛俊

1 事案の概要

依頼者夫婦が株式会社魚国総本社との間で契約社員として有期雇用契約を締結し、京都銀行の銀行員寮の寮管理人(以下「寮監」といいます。)として同所に住込みで10年以上にわたり業務に従事していたところ、突如、「京都銀行から寮管理者交代の強い要望を受けた」ことを理由に給食補助業務への配転が命じられた事件です。

その後、魚国は、配転命令の実質的理由として寮監夫婦が寮管理業務(特に清掃)の適格性を欠いていることを挙げ、配転先で勤務する労働契約上の義務のあることの確認を求める仮処分を申立てました。先んじて、私たちは、上記配転命令が住居のはく奪という重大な不利益を意味することから配転先での就労義務を負わないことの仮処分を申立てていました。

2 判決の内容

結論から言うと、寮監夫婦が寮管理業務の適格性を欠いているということはできないから、本件配転命令を発令する合理的な理由の疎明があったということはできないとして、魚国の申立事件は却下されました。私たちの申立事件については、配転先に勤務する労働契約上の義務を負わないことの確認請求権については疎明があると認定されたものの、寮監夫婦に年金収入があるため保全の必要性はないと判断されました。

判決の内容面についても、私たちの主張の大部分が認められ、魚国が作成した業務マニュアル等は存在せず本件に至るまで魚国から寮監夫婦に対して清掃に関する指導・監督は一度もなかったのであり、寮監夫婦が雇用契約に基づいて行うべき清掃業務の内容に関し魚国と寮監夫婦との間に共通認識があったとは考え難いとして、寮監夫婦に指示命令違反はなかったと認定しています。むしろ、京都銀行から寮監夫婦に対する種々の指示命令があったこと、さらには魚国が京都銀行から受託していない業務を寮監夫婦は京都銀行から命じられるままに行ってきたことが認定されました。

3 今後について

魚国は配転命令の理由の後付けとして寮監夫婦による業務命令違反を主張していましたがこれは事実無根であり、実際の配転命令の理由は京都銀行の意向というものにほかなりません。今回の裁判所の判断では清掃業務に絞った判断がされましたが、その他業務全般についても魚国による指示命令はなく専ら派遣先である京都銀行による指示命令があったのであり、仮処分事件を通じて偽装請負状態にあったことは客観的にもますます明白になりました。

ひとまず寮監夫婦が寮監室に居住して就労する権利が裁判所においても認められましたが、今後も魚国との本案訴訟及び京都銀行との訴訟が続きます。皆さまご支援のほどよろしくお願いいたします。

(弁護団は、村田浩治、中筋利朗、榧野寛俊)

 

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