民主法律時報

コード雇止め事件不当判決のご報告

弁護士 諸 富  健

1 事案の概要

原告は、2018年5月7日、色紙等を製造販売する株式会社コード(以下「被告」と言います。)にパート従業員として入社し、3か月の試用期間を経て、同年8月7日から1年の有期労働契約を締結しました。翌年は特に手続きをとることなく契約更新されましたが、2020年8月6日、コロナ禍による影響で経営悪化したことを理由として雇止めされました。そこで、同年9月7日、本件雇止めは無効であるとして、地位確認等を求めて提訴しました。

重要な事件ですので、提訴時に記者会見し、その後京都民報の取材に応じ、さらに原告を支援する労働組合が抗議の書面を被告に送ったり、春闘討論集会で宣言を採択したりしたのですが、被告はこれらによって名誉毀損・信用毀損、業務妨害されたとして、440万円の損害賠償を求める反訴を提起しました。こちらとしても、このような訴訟は嫌がらせ目的のスラップ訴訟だとして、追加で損害賠償を求める訴えの変更をしました。

2 判決の概要

2022年9月21日、京都地方裁判所第6民事部(光吉恵子裁判官)は、双方の請求を棄却する判決を下しました。

まず、原告の本訴については、有期労働契約とした目的に相応の合理性があり、原告の担当業務が代替可能であること、原告が雇用期間1年であることを十分認識していたこと、更新回数が1回で通算雇用期間が合計2年3か月と比較的短期間にとどまっているとして、雇用継続に対する合理的期待を認めるのは難しく、そうでないとしても、その程度は必ずしも高くないと判示しました。

そして、①2020年3月~6月に売上減少、②2020年4月20日頃から全てのパート従業員休業、パート従業員2名退職、夏季賞与不支給、③本件労働契約の期間満了時点で、その2日前に9月末までの雇用調整助成金特例措置が12月末まで延長する検討に入ったという報道はあったが、延長の有無、内容や期間が定まっていなかった、④原告と同じ部にいたもう1名のパート従業員は2度の契約更新を経て通算雇用期間が3年となっていた、⑤被告は期間満了1か月前に契約更新に応じられない旨通知し、団体交渉の席上でも被告の業績が芳しくないため原告を雇止めする旨説明していたという事情を挙げて、これらを総合考慮すると、本件雇止めが客観的合理性・社会的相当性を欠いたものということはできないと判示しました。

一方、被告の反訴については、原告の記者会見場の発言は意見表明の域を逸脱したとはいえない、インタビュー上の発言は原告の立場から見解、意見を述べたものであるとして、また、労働組合の抗議文書や宣言文の作成に原告が関与していないとして、被告の主張を退けました。ただ、この反訴は、裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠くということはできないとして、原告の追加請求も認められませんでした。

3 判決の不当性

原告は、入社時の年齢が55歳で、雇用契約書には「定年(60歳)に至った時点で、乙は退職する。」との定めがあり、2年目の契約更新は何らの手続きもなかったことから、定年まで働けると信じていました。判決はそのことを指摘しているにも関わらず、雇用継続の合理的期待を否定しており、不当と言わざるを得ません。

また、上記5つの事情を「総合考慮」すると述べただけで、なぜ「総合考慮」すると客観的合理性・社会的相当性が認められるのか、その理由を一切述べずに結論を導いており、結論ありきの不当判決です。そもそも、原告は週3日、1日の所定労働時間5時間50分のパート従業員ですから、雇用調整助成金を利用すれば、100%の休業手当を受給でき、雇用保険料や社会保険料の負担もないため、被告の負担は一切ありません。原告を雇止めする時点で同年9月末までは特例措置があることは分かっていたのですから、そこまで労働契約を延長すれば、その後も特例措置が継続していくことが分かったのであり、原告の雇用を継続することができたのです。

非正規労働者の実態に真摯に向き合わず、安易に首切りを認めて原告の生活の糧を簡単に奪った冷酷な判決をこのまま維持させるわけにはいきません。控訴審では必ずや逆転勝訴を得るべく尽力いたしますので、ご支援のほどよろしくお願いします。なお、担当弁護士は中村和雄弁護士と当職です。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP