民主法律時報

守口学童保育指導員雇止め事件で、 大阪府労委が勝利命令

弁護士 原 野 早知子

1 完全勝利の救済命令

大阪府労働委員会は、2021年10月14日、守口市学童保育指導員労働組合(以下「組合」)が救済申立をした事件で、被申立人株式会社共立メンテナンス(以下「共立」)に対し、①雇止めした組合員10名を原職復帰させ、賃金相当額を支払うこと、②団体交渉に応じること、③組合に対する謝罪文交付とポストノーティスを命じる救済命令を交付した。(命令は10月12日付け)

守口市の学童保育事業は、2019年4月から共立に民間委託され、守口市で勤務していた指導員らは、共立と期間1年の雇用契約を結んで働くこととなった。組合は共立に対し、労働条件の明確化等を求め、団体交渉を申し入れたが、共立が拒否したので、2019年9月に団交拒否について大阪府労委に救済申立をした(先行事件)。組合が、共立による学童保育運営の変更や、組合員への不当な対応に対し、申入れや抗議等の活動を継続していたところ、共立は、2020年3月、13名の指導員を雇止めした。13名のうち12名は組合員であり、組合四役は事実上全員が雇止めされた。この間、共立は団交拒否を続け、一度も団交は開催されなかった。

組合は、組合員10名に対する雇止めと団交拒否について、2020年8月に大阪府労委に救済申立を行った。今回、この申立に対して救済命令がなされたものである。(先行事件については、団交拒否を不当労働行為とする中労委の命令が確定している。また、雇止めについては組合員が原告となり、大阪地裁に提訴している。)

共立側は、大阪府労委の期日に一度も出頭しなかった。共立は、先行事件でも、初回審査期日に出頭後は、欠席を続けており、労働委員会軽視の姿勢は一貫したものであった。しかし、労働委員会の審理は、被申立人(使用者)が欠席したからといって、自動的に「欠席判決」のごとく、申立人の主張通りの救済命令が出されるものではない。府労委からは複数回の求釈明がなされ、組合は、これに応えて主張書面を提出し、中尾光恵書記長の審問も実施して、不当労働行為の主張立証を行った。その結果、府労委命令は、組合員に対する雇止めが1号(不利益取扱い)・3号(支配介入)・4号(救済申立に対する不利益取扱い)の不当労働行為に当たること、団交拒否が2号・3号の不当労働行為に当たることを認めた。

2 命令の特徴

1点目の特徴は、有期雇用契約更新の合理的期待の存在を認めたことである。組合員らと共立との間では、一度も更新がなされておらず、並行する裁判では、合理的期待(労契法19条2号)の有無が最大の争点となっている。

命令は、①指導員の業務は、児童クラブの運営において恒常的に必要な業務であること、②正社員の指導員はおらず、有期雇用の組合員らが児童クラブの運営において基幹的な役割を担っていたこと、③守口市と共立の業務委託契約(仕様書)に、「支援員の雇用を長期的に安定した形態とする」との学童保育の運営指針を遵守することや、守口市が市直営時から就労していた指導員のうち、希望者全員を雇用するとの共立の方針を履行することが定められていること、④共立が市直営時に就労していた指導員について現給保障を説明し、守口市での実績を一定引き継ぐ姿勢を見せていたこと、⑤組合員らが約7年から36年もの間、継続して守口市の児童クラブで勤務していたこと、⑥就業条件通知書の記載をめぐり、共立の関西支店長が、「ほとんどの者が更新されており、よほどのことがないと更新されないことは無い」と説明をしたこと等を指摘し、「組合員10名にとって、雇用契約更新の期待は極めて強いものであった」として、合理的期待を認めた。客観的な事実関係に基づく手堅い判断であり、大阪地裁の裁判にも大きな影響を与えるであろう。

2点目の特徴は、共立の不当労働行為意思を正面から認定したことである。共立は府労委に提出した書面で、「委員長以外の役員及び組合員の存在は不知(組合員かどうか知らない)」と主張していた。しかし、共立は、裁判所に提出した準備書面では、「原告らは所属する組合の『共立を守口市の学童保育事業から撤退させる』方針に則った行動をとっていた」として、原告らの組合活動を理由に雇止めを正当化する主張を展開し(なお、共立のいう「組合の方針」は事実とは異なる)、不当労働行為を自認していたのである。

命令は、組合員らが2019年度を通じ組合活動を行っていたことを認定し、共立が裁判所に提出した準備書面の記載をも根拠として、雇止めは組合活動を理由とするものと認めた。

3点目の特徴として、命令書の末尾に、「本件審査手続において、会社とも日程調整した上で設定した期日に欠席を繰り返し一度も出席することなく、また、組合の労働組合法上の適格性についても、既に先行事件において適格と判断されているにもかかわらず、従前と同様の主張を繰り返すなどの対応を続けている。かかる会社(共立)の対応は、労働委員会制度の趣旨を全く理解しようとしないものであって、断じて容認できるものでない」と異例の附言がなされた。労働委員会自身が、特に悪質性の高い事案と捉えており、先行事件に続き、ポストノーティスまでが命じられた。

共立は、先行事件以来、都道府県レベルの労働委員会の手続を無視し、ただ紛争を長期化させる戦略をとってきた。しかし、2021年4月に先行事件の中労委命令が出された後、大阪府を皮切りに複数の自治体で、共立に対し、法令違反行為を理由とする入札停止措置がドミノのように続いた。さすがに堪えたのか、共立は先行事件では取消訴訟提起を諦め、組合との団交に応じるに至った。労働委員会の命令にはそれだけの重みがある。

今回の府労委命令への対応が注目されたところ、10月末時点で、共立は中労委への再審査申立は行っていない。取消訴訟を提起するものと予測される。

3 今後の課題

組合員らの雇止めから既に1年7ヶ月が経過した。裁判・労働委員会の手続は、速いペースで進んできたとはいえ、職場を奪われた労働者にとっては長く苦しい時間であった。

この間、共立の悪質な姿勢に加え、このような企業に学童保育事業を受託させた守口市の無責任さも露わとなっており、共立・守口市の双方に解決を迫ることが課題である。当事者の苦悩に接してきた弁護団としても、府労委命令を契機に、一際大きく運動を広げ、争議解決に向けて全力を挙げる決意を新たにしている。

(弁護団は城塚健之・原野早知子・愛須勝也・谷真介・佐久間ひろみ)

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