民主法律時報

大阪地裁の不当判決―― 建交労・組合掲示板撤去事件

弁護士 西川 大史

1 はじめに

大阪市・大阪シティバスによる建交労の組合掲示板使用許可更新拒否及び大阪市の団体交渉拒否の不当労働行為事件での府労委命令取消請求事件の判決が2016年2月8日に大阪地裁(内藤裕之裁判長)であり、判決は、大阪市の使用者性を否定するとともに、大阪シティバスの不当労働行為を否定する判決を言い渡しました。

2 事案の概要

大阪シティバス(旧名称:大阪運輸振興)は、1988年に設立された大阪市の外郭団体で、大阪市交通局から市バスの一部の路線バスの運行業務などを委託されています。2011年6月に会社内に分会が結成された建交労では、シティバスに掲示板の設置を求めたところ、シティバスは大阪市交通局に組合掲示板に関する施設使用許可願いを提出し、大阪市交通局も施設使用許可をしたため、組合掲示板の使用が認められてきました。
ところが、シティバスは、2012年2月27日、「交通局より平成24年4月1日以降、組合掲示板の設置についての使用許可を更新しない旨の通知があったので、掲示板について3月31日までに撤去すること」との通知をしてきました。そこで、組合では、大阪市とシティバスに対し、団体交渉の申入れを行うとともに、掲示板撤去の通知の撤回を要求しました。しかし、大阪市は「組合との団体交渉に応じる意思はない」と団体交渉を拒否し、シティバスは「組合への便宜供与はしないと交通局が決めたことなので会社としてどうすることもできない」と主張して組合の要求を拒否したため、組合は大阪府労委に不当労働行為救済を申し立てました。しかし、府労委命令は、大阪市の使用者性を否定するとともに、大阪シティバスの不当労働行為を否定したため、組合が府労委命令の取消請求を求めていました。

3 判決の不当性①――使用者性についての形式的判断

判決は、使用者性について、朝日放送事件判決を用いて、大阪市がシティバスの労働者の労働条件や業務関係に関与していないとして「労働者の基本的な労働条件等を直接支配決定するのと同視し得る程度に、現実的かつ具体的に支配や決定できる地位にない」として使用者性を否定しました。
しかし、本件で問題となっているのは、組合掲示板撤去の通知の不当労働行為性です。派遣労働者の受入企業の使用者性が問題となった朝日放送事件判決の基準を転用し、労組法の趣旨を十分に検討することなく同判決の文言に追従し、形式的な判断をした本判決は大きな誤りです。

4 判決の不当性②――組合の救済の途を絶つ判断

また、組合掲示板の設置には大阪市の許可が不可欠であり、撤去を通知したのも大阪市でした。ところが、判決は、「大阪市は組合掲示板設置に一切関与していない」と判断しており、甚だしい事実誤認があります。
他方で、判決は、シティバスの不当労働行為を否定する理由として「交通局からの掲示板撤去の通知により、シティバスが組合に掲示板スペースを貸与することができなかった」からだと判断しており、判決自体が、大阪市が組合掲示板の設置及び撤去に関与したことを認めており、論理矛盾というほかありません。これでは、本件のような不当労働行為について、大阪市及びシティバスいずれも責任を負わないことになり、組合は救済の途が閉ざされてしまいます。

5 判決の不当性③――大阪市の不当 労働行為意思を否定

しかも、本判決は、大阪市が不当労働行為意思をもって組合掲示板撤去の通知をしたとの証拠も認められないとも判断しました。
大阪地裁第5民事部(中垣内裁判長)では、これまでの大阪市の一連の労働組合攻撃を不当労働行為と判断してきたにもかかわらず、合議体の構成が一変した第5民事部での本判決は、あっさりと大阪市の不当労働行為意思を否定したのであり、これも大きな問題であります。

6 さいごに

このような判決では労働基本権が十全に保障されません。組合では控訴し、上記の不当性を中心に主張しており、第5民事部の判決がいかに形式的かつ硬直的な不当判決であったかを明らかにしていきたいところです。引き続きのご支援をお願いします。

(弁護団は、梅田章二、河村学、楠晋一各弁護士と西川大史)

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