民主法律時報

日本放送協会事件(不当労働行為救済申立事件) 勝利命令のご報告

弁護士 野 矢 伴 岳

1 事案の概要及び争点

 本件は、被申立人である日本放送協会(NHK。以下、「協会」という)が、①NHKの地域スタッフ(受信料の取次・集金等を行うスタッフ)で構成される申立人組合(全日本放送受信料労働組合堺支部。以下、「全受労」という)の執行委員長A氏に対して、契約の取次等に用いる通信決済機器(キュービット)の貸与を取り消し、返却させたこと、②全受労からの団体交渉の申し入れに対し、協会が外部の者であるとする坂元氏(組合の特別執行委員で、堺労連事務局長)の出席を理由として、団体交渉を拒否したこと、が不当労働行為にあたるとして申立てを行った事件です。
 本件の争点は、1.全受労の組合員である地域スタッフは協会との関係で労働組合法上の労働者と言えるか、2.協会がA氏に平成23年1月中旬以降キュービットの返還を要求し、その後貸与しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか、3.平成23年11月2日団交申し入れに対する協会の対応は、正当な理由のない団交拒否にあたるか、の各点でした。

2 委員会の判断

 7月30日付命令では、結論として、争点2については理由が無いとして棄却されましたが、争点1及び3については、全受労の主張が容れられ、団交拒否が正当な理由の無いものであり、不当労働行為であったことを認め、今後このような行為を繰り返さないことを約束する旨の文書を全受労に手交する命令が出されました。

 争点1に関しては、INAX、ビクターの最判事例と同様の基準による検討を行い、(ア)事業組織への組み込みについては、協会の事業は受信料が収益の大部分を占めており、その契約取次等について協会が様々な研修や指導を行い、必要な物品等を交付していたこと等、(イ)契約内容の一方的・定型的決定については、統一様式の契約書が用いられていること等、(ウ)報酬の労務対価性については、地域スタッフの報酬体系は、名目は相違するものの一般の労働契約上の賃金体系と同じものであること等、(エ)業務の依頼に応ずべき関係については、地域スタッフは協会から目標数を設定され、それが遂行できない場合には、協会の担当職員からの助言、指導や特別指導を受けることになっており、協会からの圧力を受けていたこと等、(オ)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束については、協会が目標数を算出して設定していたことや、協会の助言や指導が詳細にわたっていたこと、地域スタッフの携帯端末が局によりリアルタイムで管理されていたこと等、(カ)顕著な事業者性を認める要素が存在しない等、各々の考慮要素について、ほぼ全受労の主張するとおりの事実を認定し、地域スタッフの労組法上の労働者性を肯定しました。

 争点2については、協会が、本件係争中に、A氏にキュービットを交付するように転じたこと等も影響してか、組合の活動を行ったことを理由とする不利益取り扱いであるとは認められませんでした(ただし、協会にそのように転じさせたこと自体が、本件申立ての一つの成果であるとはいえます)。

 争点3については、地域スタッフ以外の第三者を交渉に加えないことについて、これまで労使間で合意が成立した事実は無いこと、坂元氏を団交に出席させる必要性があるかは組合の判断する問題であること等を指摘し、「団交申し入れに対する協会の対応は、正当な理由の無い団交拒否にあたると言わざるを得」ないとしました。

3 本件命令の持つ法的・実践的意義

 本件は、NHKの地域スタッフからなる諸組合にとって、使用者側が、不当にも長年に渡り争って来た労組法上の労働者性に関し、委員会の命令においても、最高裁判例の枠組みに従って正当な判断を示したものであり、今後の当該組合の活動にとっても重要な意義があるといえます。
 また、団交拒否の点についても、組合の交渉担当者は組合が決定すべき事項であることを明言し、これを制限する正当な理由を認めなかったことは、当然のことではありますが、これからの交渉を行う上での実践的な意味を持つと思われます。
 一方で、本命令に残る課題として、命令内容に関し、申立人がキュービットの交付以外にも要求していた事項があったにも関わらず、誓約文の交付のみで、団交応諾を認めなかったことについては、判断に不服が残ります。

4 最後に

 本件では申立て当初より、河村学先生、井上耕史先生に様々なご指導、ご鞭撻をいただき、事件に関しても一定の成果を挙げることが出来ました。西澤真介先生とは、共に学び、意見を交わさせていただきました。紙面にて恐縮ではありますが、謝辞を述べさせていただきます。
 協会は本命令を不服として再審査を申し立てたため、引き続く闘争への支援をお願いします。

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