民主法律時報

国土交通省団交拒否事件東京地裁判決― 国の「使用者」性否定の不当判決

弁護士 中 筋 利 朗

 国土交通省事件は、中国及び九州地方整備局の国道・河川事務所の車両管理業務を受託した会社(日本総合サービス)の従業員が、国道・河川事務所で、車両の運行・管理等の業務に従事していましたが、実際には、国交省職員の指揮命令等のもと車両の運行等を行っていた、いわゆる偽装請負に関する事件です。平成20年12月以降、同社の従業員7名は、広島、福岡等の労働局に是正申告を行い、平成21年2、3月に日本総合サービス及び従業員が業務に従事する各国道・河川事務所に是正指導がなされましたが、平成21年3月に実施された競争入札で日本総合サービスが落札できなかったことから、先の従業員7名は長期間雇用されていたにもかかわらず、3月末日で解雇されてしまいました。従業員7名は原告組合(スクラムユニオン)に加入し、中国、九州地方整備局長等に対し、雇用確保等に関して団体交渉を求めましたが、中国、九州地方整備局長等は、団体交渉に応ずべき地位にないとして団体交渉を拒否したことから、団体交渉拒否の不当労働行為にあたるとして、労働委員会に救済申立を行いました(日本総合サービスに対しては別途裁判手続きを行い、和解で終了しています)。

広島県労委は、国(国土交通省)が労組法7条の「使用者」にあたることを認め、組合員らの雇用の確保(直接雇用(任用)を除く)に関する団体交渉に応じることを命じましたが、中労委は、国(国土交通省)が、団交申入れの交渉事項につき労組法7条の「使用者」にあたらないとして、広島県労委が団体交渉を命じた部分を取り消して、救済申立を棄却しました。これを不服として組合が提起した訴訟の判決が、9月10日、東京地裁が行った判決です(裁判長裁判官清水響、裁判官伊東由紀子、同島尻香織)。

 本件の争点は、国(国土交通省)が労組法7条の「使用者」に該当するのか、ということですが、東京地裁判決は、雇用関係のない事業主については、「当該労働者の基本的な労働条件等に対し、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している者や、近い将来において労働者と雇用関係が成立する現実的かつ具体的な可能性がある者など、雇用関係に近似し、又は隣接する関係を基盤とする者であることを要する」としたうえで、本件の国(国土交通省)について、原告組合員7名の車両管理業務を行う際の運行先、運行時間及び業務内容等の労働条件について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配決定することができる地位にあるといえ、その限りにおいて「使用者」にあたるとしましたが、それ以外の事項、採用及び労働契約の内容の決定や、雇用を継続するか解雇するかの決定については、日本総合サービスの判断で行われており、現実的かつ具体的な支配力を有していないとして、原告組合員7名についての雇用継続について労組法7条の「使用者」にあたることを否定し、また、近い将来、雇用関係が成立する現実的かつ具体的な可能性も認められないとして、国(国土交通省)が労組法7条の「使用者」にあたることを否定し、結論として原告の請求を棄却しました。

 近時、中労委では、使用者について上記と同様の枠組みのもと、派遣先等の使用者性を否定する判断がなされており、本件判決は、この判断を追認するものですが、労組法7条の「使用者」についてのこのような考え方は、労働組合にとっての団体交渉の果たす役割と重要性、不当労働行為制度の趣旨を全く理解しないものというほかありません。特に、本件では、国(国土交通書)がいわゆる偽装請負状態の下、使用者としての権限を違法に行使していることや、法を遵守して派遣の形態をとっていれば、直接雇用の申し込み義務が生じているのに、そのことについて全くと言ってよいほど考慮がされておらず、このような場合も、団体交渉にすら応じなくてよいということとなると、法を守るよりも、守らない方が得をするという結果となり、実質的にも不当と言うほかはありません。

最近は、派遣・請負等で雇用主ではない事業主との間で関係を持つ場合が増えており、このままでは労働組合の団体交渉権を十分に保障することができません。
控訴審では、東京地裁判決の労組法7条の「使用者」判断枠組みの不当性を指摘し、東京高裁ではぜひとも国(国土交通省)の使用者性を認めさせて、逆転の勝訴判決を得たいと思っています。

(弁護団は、村田浩治、河村学、井上耕史(以上大阪)、平田かおり、佐藤真奈美(以上広島)、渡辺晶子(福岡)と中筋です)。

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