民主法律時報

府労委からの文書要望が和解解決に寄与

弁護士 西 口 加史仁

1  はじめに

本件は、会社(以下「被申立人」という。)が、トラック運転手として働くAさん(以下「申立人」という。)を、Aさんの組合加入直後に倉庫業務に配転したこと、及びその後の解雇が、労組法7条1号の不利益取扱などにあたるとして、乗務作業への復帰などを求めた事案である。不当労働行為救済申立後、府労委において審理を重ねてきたところ、今般、和解が成立したため、顛末を報告する。以下に述べるとおり、本件は、申立人らが実効確保の措置申立てを行い、これに対して担当公益委員から文書要望が出されたことが、和解解決に大きく寄与したと評価できる一事例である。

2 当事者、事案の概要等

(1) 当事者
被申立人は、愛知県四国中央市に本社を置き、貨物輸送などを業とする株式会社である。被申立人には、本社以外に、関西支店、関東支店、仙台支店がある。従業員数は約365名である。

申立人は、2018年5月に被申立人と労働契約を締結し、被申立人の関西支店において、長距離大型トラック運転手を務めてきたものである。
申立人組合は、全日本建設交運一般労働組合関西ダンプ支部である。

(2) 事案の概要
被申立人においてトラック運転手として勤務していた申立人が、配車差別、長時間労働および上司からのパワハラに端を発し、組合に加入した。組合加入後、初めての団体交渉の場で、申立人が「上司からのパワハラによって自宅で睡眠薬を飲んでいたこともあった」などと発言した。会社は、この発言を奇貨として、「運転面で健康上の不安がある」「今後、申立人を大型トラックに乗車させない」と一方的に通告し、実際に申立人の職務を倉庫作業業務に職種変更した(同職種変更に伴い、賃金が大幅に減額となる。以下「本件職種変更」という。)。

2020年7月、本件職種変更が、不利益取扱などにあたるとして、府労委に不当労働行為救済を申し立てた。申立人側は、乗務が可能との医師の意見書を提出したり、会社側が配転の根拠とした陸運局担当者の発言が存在しないことを録音により立証するなどした。

3 実効確保の申立ておよび文書要望

ところが、2021年2月、会社は、本件申立ての調査中であるにもかかわらず、申立人の病歴、インターネットへの書き込み等を理由に、申立人に退職勧奨をした。当然、申立人はそれを拒否したところ、被申立人は、申立人を解雇することを示唆した。そこで、申立人らは、府労委に対して、退職勧奨や解雇などの不利益取扱をしてはならないとの勧告を申し立てた(以下「本件実効確保の申立て」という。)。

本件実効確保の申立てから10日後、担当公益委員である三阪佳弘委員から被申立人に対して、「現在、審査手続き中であることから、被申立人は、これ以上労使紛争が拡大しないよう慎重な対応に努められたい」旨内容とする文書要望が出された。

しかしながら、被申立人は、あろうことか同文書要望を完全に無視し、申立人を解雇した。

そこで、申立人らは、同解雇についても、新たに不当労働行為として救済申立てを行い、併合審理されることとなった。

4 和解について

(1) 和解内容
府労委において、当初の不当労働行為救済申立てから約1年半の間審理が行われたが、令和3年11月16日に、申立人らの勝利和解が成立した(以下「本件和解」という。)。

(2) 和解解決に至った理由
本件において、被申立人は、当初、歩み寄りの姿勢を一切見せず、双方の提示する解決案にあまりにも大きな開きがあったことから、申立人側は「和解による解決は困難」と考えていた。ところが、前記のとおり、担当公益委員から文書要望が出されたにも関わらず、被申立人があろうことかこれを無視し解雇を行ったことは、労働委員会軽視も甚だしく、和解解決に大きく寄与した。つまり、要望書は、本件で被申立人が申立人を解雇することは誤っていることを示すものであったにもかかわらず、被申立人があえてこれを無視したことにより、被申立人側に対する心証が悪くなり、府労委からの強い説得に対して譲歩せざるを得ない状況に追い込まれたのであろう。府労委による文書要望は異例であるが、本件においても非常に重要な意義があった。

5  最後に

本件に関連して、大阪地方裁判所において、別途残業代請求事件が係争中である。申立人側および府労委(裁判所)は、「残業代についても、同時に解決できないのか」と被申立人側に検討を迫ったが、残業代については別途争う旨の回答があった。そのため、残業代請求事件については今後も審理が続く予定である。

(弁護団は、須井康雄弁護士、西川大史弁護士と西口加史仁)

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