民主法律時報

東大阪市・学童保育指導員解雇事件で勝訴判決

弁護士 原 野 早知子

1 事件・紛争の経過

 本件は、東大阪市楠根小の学童保育クラブで長年勤務していた学童保育指導員越智康純さん・中山洋美さんの2名が、解雇(雇止め)された事件である。
 東大阪市の学童保育は元々市の直営事業だったが、平成元年度から、「分割民営化」され、小学校区毎に地域の役職者等で構成する「地域運営委員会」が運営主体となった。指導員は、市の直営時代は東大阪市の非常勤職員だったものが、民営化後は各委員会と契約して勤務することとなった。
 指導員らは、市直営時代から東大阪市ちびっ子クラブ指導員労働組合(ちびっ子労組)に加入しており、「分割民営化」に際しては、東大阪市に対し、不当労働行為救済申立てを行い、雇用の継続を確保するなど、組合運動を続けてきた。
 楠根の地域運営委員会は、平成26年3月、指導員の勤務条件の不利益変更を一方的に通告した。ちびっ子労組と東大阪市職労は、運営委員会に団体交渉を申し入れた。ところが、運営委員会は「指導員は労働者ではなく『有償ボランティア』である」として団体交渉を拒否し、勤務条件の不利益変更に異議を唱えた越智・中山2名を年度末に雇止めしたのである。
 ちびっ子労組が、平成26年3月、大阪府労委に団交拒否についての不当労働行為救済申立てを先行して行っており、これを追う形で、平成26年5月、大阪地裁に原告2名の地位確認・賃金支払を求める本訴を提起した。府労委・本訴の双方で、運営委員会側は、「指導員は『有償ボランティア』(有償の委任)であり、労働者ではない」と主張し、両手続で、学童保育指導員の労働者性が唯一の争点となった。(府労委では平成27年1月に最終陳述を行って終結している。)

2 完勝の勝訴判決

 平成27年3月13日、大阪地裁第5民事部(中島崇裁判官)は、越智・中山両名について、運営委員会に対する労働契約上の地位を確認し、運営委員会に雇止め後の賃金全額の支払を命じる判決を言い渡した。「訴訟費用は被告の負担とする」で結ばれる、十割の完勝だった。
判決は、以下の各点を指摘し、学童保育指導員の労契法(労基法)上の労働者性を認めている。
(1) 業務上の指揮監督関係について
 ①運営委員会の「規約」上、指導員の職務に「その他運営委員会より命じられたこと」が含まれるなど、指導員の職務を運営委員会が指揮監督する定めとなっていること、②市直営時代に、指導員の勤務場所・勤務時間・指導方法が市の規程・要領で詳細に定められ、労使交渉や不当労働行為救済申立ての際にも、東大阪市が労働契約を前提とする合意・答弁をしており、指導員は市と労働契約を締結していたところ、「民営化」に際し契約関係について特段の変更が加えられていないこと、③事業運営のためには、業務従事時間や指導方法を指導員間で調整する必要があり、運営委員会が各指導員に指揮監督権限を有するのでなければ、事業運営が困難であることを認定し、更に、指導員に諾否の自由がないこと・時間的場所的拘束性・代替性の不存在を認定して、指揮監督関係の存在を認めた。
(2) 報酬の労務対償性
 指導員は、1時間当たり1000円の単価で、業務従事時間を掛けて報酬が定められていることをもって報酬の労務対償性を認めた。
(3) 労働者性に係るその他の事情
 ①原告らを含む指導員が雇用保険に加入し、②所得税が源泉徴収されていること、③雇止めの際の離職票に「解雇」と記載されていること、④勤務条件不利益変更の際、運営委員会の委員長が「運営委員会は、会社で言うと経営者、指導員は従業員。経営者の方針に従うのが従業員で、受け入れられなければ退職ということになる」旨発言したことなどを認定し、労働者性を補強する事情とした。
 判示は、証拠に基づいて事実関係を詳細に認定し、「有償ボランティア」という趣旨の不明な名称にとらわれず、実態に即して労働者性を認定したものと評価できる。東大阪市直営時代の契約が労働契約であることを認定し、それを根拠に「民営化」後の労働者性をも認定したことが特徴的である。

3 判決の意義と今後の闘い

 原告の越智・中山両氏は、長年働き続けた職場を理不尽に奪われ、正当な解決手段である団体交渉すら拒否され、1年間にわたり経済的にも精神的にも甚大な苦痛を受けてきた。まず、当事者の救済として意義が大きい。
 また、学童保育指導員について、あるいは「有償ボランティア」の名称による契約について、労働者性が争点となった事案はなく、労働者性(労契法・労基法)に係る先例としても価値のある判決である。
 判決は控訴なく確定し、越智・中山両氏は4月2日から職場復帰した。現在、最終解決に向けて交渉中である。
 本件は、民法協会員から、大変大きな支援をいただいてきた。判決日には法廷にあふれるほど沢山の方が駆けつけ、勝訴の喜びを共にした。篤く御礼申し上げ、最後までの支援をお願いする次第である。

(弁護団は、城塚健之・原野早知子・谷真介・藤井恭子)

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