民主法律時報

JMIUビクターサービス支部損害賠償請求・継続雇用拒否事件――「一括和解」解決の報告

弁護士 鎌 田 幸 夫

 
 2月20日、JMIUビクターサービス支部・ビクターアフターサービス分会損害賠償請求事件(①事件)と、同支部の継続雇用事件(②事件)が、併合のうえ大阪地裁労働部(中垣内裁判長)で和解解決した。同じビクターサービス支部の争議として一括解決した事案として、その経過と和解の意義を述べたい。

2 事案の概要

(1) ビクターアフターサービス分会・損害賠償請求事件(①事件)の経過
 日本ビクターの100%子会社であるビクターサービスエンジニアリング株式会社(会社という)と「業務委託契約」を締結した代行店労働者が、分会を結成し、2005年1月31日、団体交渉を申し入れたところ拒否されたので、不当労働行為救済申し立てを行い、府労委(2006年11月17日)、中労委(2008年3月25日)で労組法上の労働者性が認められ勝利命令を得たが、東京地裁で労働者性が否定され救済命令が取消され(2009年8月6日)、東京高裁でも控訴が棄却された(2010年8月26日)。最高裁で、INAXメンテナンス事件、新国立劇場事件に続き労働者性が認められ、原判決破棄・差戻しの勝訴判決を得て(2012年2月21日)、差戻し審も勝訴し(2013年1月23日)、会社の上告が棄却され(2014年2月20日)勝訴が確定した。9年に及ぶ長い闘いであった。
 今回和解した損害賠償請求事件は、東京地裁、高裁で労働者性が否定されるという厳しい情勢のもと、2011年4月 日、分会員2名が組合活動を嫌悪して受注件数が減らされ損害を被ったとして提訴したものである。団体交渉を求めるのみでは経済的な損害を回復できないこと、東京のみならず大阪で裁判闘争を展開することで運動を広げることが目的であった。提訴後、他の代行店との対比において収入に格差があることを立証するために会社の保有資料の文書提出命令を行い、裁判所の勧告で会社から提出された資料を分析し、比較対象を分会を脱会した従業員として格差を主張した。主張整理が終わり、立証に入る段階であった。

(2) ビクターサービス支部継続雇用拒否事件(②事件)の経過
 会社には、統一労組とVES労組があったが、統一労組は、2004年に大規模なリストラと闘うために、JMIUに加盟し、ビクターサービス支部となった。支部は、前述した代行店の分会結成を支援し、労働者性を認めさせる労働委員会、裁判闘争を全面的に支援した。会社は、JMIUの活動を嫌悪する言動を繰り返し、組合活動に制約を加えたり、残業を拒否したりする不当労働行為を繰り返した。
 他方、会社が2001年4月に導入した継続雇用制度では意欲があり健康であれば継続雇用される制度であったが、2007年4月の制度改定で「直近2回の業績ランクとも標準を上回っている者」との要件が付け加わった。会社は、この要件で支部の役員経験者らの継続雇用を拒否した。
 2013年6月28日、執行委員長であった新垣内さんが、継続雇用拒否は不当労働行為として府労委に救済申し立てをした。2014年12月26日結審し、2015年6月にも命令が出される予定であった。また、2014年12月、地位確認と損害賠償請求の本訴を提起した。この継続雇用拒否事件の提訴は、①の分会の損害賠償事件の闘いを側面援助するという意味合いもあった。
 裁判では、不当労働行為の他に、会社と他労組が2007年4月改定の継続雇用規程について労使協定を締結しているが、他労組が高年法9条2項が求める過半数組合でなく、協定は効力を有しないこと、2007年改定の規程は、従前の就業規則の不利益変更であり合理性がないという主張も追加した。裁判の経過は、総論の主張整理がほぼ終了した段階であった。

3 和解の経過と意義

 ②事件(継続雇用拒否事件)の府労委から今年1月和解の打診があった。会社側の意向も聞くなかで、①事件(分会の団交要求、損害賠償請求事件)も含めた全体解決の機運が生じた。組合側としても、両事件とも会社によるJMIUの活動を嫌悪した不当労働行為であり、根っこは同じであり、一括解決には異存はなかった。そこで、①事件と②事件の双方が係属している中垣内裁判長に裁判所における和解期日の指定を申し入れ、2月20日両事件を併合のうえ一括して和解が成立した(府労委は取り下げ)。
 会社と組合は同じであるが、別事件であり、別々の裁判・労働委員会で争われ、それぞれに困難な争点を抱えた事件について、これ以上の争議の長期化を避けて、和解で一挙に解決できたことは、大きな意義があったものといえる。

4 和解の要因(裁判と労働員会を併用するメリット)

(1)  今回、和解解決ができた要因は何か。まず、直接の契機としては、②事件で継続雇用拒否の労働委員会の尋問で会社側証人を追い詰め、一定有利に展開していたこと、より根本的には、①事件で、代行店の労働者性に関する長期にわたる労働委員会闘争、最高裁での勝訴判決、そして継続的で広範な運動によって会社側が相当追い詰められていたことが要因であろう。

(2) また、裁判と労働委員会を両方とも提訴して、維持していくというのは正直労力が大変ではあるが、争議解決という点でみれば、今回、継続雇用拒否事件の労働委員会での和解勧告を契機に争議の全面解決につながったように解決のチャンネルが広がるというメリットがある。裁判と労働委員会双方を闘うことによる長期化のリスクと労力の大きさは、労働組合側だけでなく、会社にとっても同様なのであり、そのことが会社側にも早期の全面解決のモチベーションを持たせることになりうるのではないか 。その際、会社を追い詰める粘り強い運動が持続されていることが必要であることはもちろんである。

5 最後に

 分会員2名の方、そして新垣内さん、吉田さんら支部役員らには9年間の闘いは本当に長く苦しかったであろうと思う。その闘いの成果は、「偽装」委託契約で働く全国の労働者を励ます画期的な最高裁判決と今回の争議の一括和解となって結実した。これまでの闘いに心から敬意を表し、お疲れ様といいたい。

(弁護団は、①事件が豊川義明、城塚健之、篠原俊一、河村学、藤原航、鎌田幸夫、②事件が谷真介、西川大史、鎌田幸夫)

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