民主法律時報

《書籍紹介》木下秀雄・吉永純・嶋田佳広 編 『判例 生活保護 わかる解説と判決全データ』

弁護士 喜田 崇之

1 本書の特徴

本書は、生活保護の実務上の論点につき、体系的に整理し、論点の解説が判例の紹介とともになされています。生活保護判例研究の集大成ともいえる一冊です。

本書の著者・編者は、社会保障問題に精力的に携わってこられた学者・弁護士ら(木下秀雄先生、嶋田佳広先生、高木佳世子先生、舟木浩先生、村田悠輔先生、吉永純先生)です。本書の「はじめに」でも記載されているのですが(また、著者・編者のラインナップから見てもお判りいただけますが)、単に実務的な知識を網羅しているだけでなく、実務的な問題を批判的に整理している点も特徴的です。

生活保護行政の細かい点は、いわゆる内部通達で規定されていますが、必ずしもその通達等が適法とは限りません。当該通達の解釈をめぐって法的論争となることもあって、その意味で判例の調査は不可欠です。この点、本書は、実に詳細に、裁判例が整理されて掲載されていて、実務的に非常に役に立ちます。とりわけ、生活保護行政の実務と対峙するときに行政側の通達の壁が大きく立ちはだかっていると感じることがありますが、それを突破することを考えたときに、批判的な観点で実務上の論点が整理されてまとめられていることは、大変助かります。

本書で整理されている生活保護に関する判例は、多くの弁護士・当事者らが、目的意識をもって取り組んできたものですが、それらの判例が網羅的に解説されているので、現在の判例の到達点や、残されている課題をすぐに理解することができます。

2 本書は民法協会員必携の書籍である

生活保護分野に関する知識は、単に生活保護行政に取り組む弁護士だけでなく、全ての民法協会員に求められる知識です。

例えば、非正規労働者の相談を聞くとき等、生活保護の利用が常に選択肢として頭になければならない(特に、コロナ渦下においては、生活保護の役割は非常に重要です)場面がありますが、本書では、生活保護の補足性に関する論点(稼働能力の活用・収入認定等)も網羅的に整理されているので、生活保護の利用に関する基本的な知識を習得することも可能です。

また、特に弁護士にとって、生活保護を利用されている方が逮捕・勾留された場合に生活保護はどうなるのかといった論点や、保護費の返還(法63条)・不正受給(法78条)に関する論点は、いずれも、刑事事件や破産事件等を処理する上で、間違うことのできない必須知識ですが、本書では、そのあたりの論点も、判例を交えて整理されています。

3 まとめ

以上のことから、本書は必携だと思います。著者・編者も、おそらく大変な労力をかけてまとめられたと思いますので、ぜひ、ご購入いただければと思います。

 

B5判 272頁
定価 5,500円+税
発行 山吹書店 2020年8月31日
発売 JRC

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