民主法律時報

第3回労働相談懇談会「能力不足」が理由の解雇・雇止め、試用期間延長、労働条件引き下げへの対応について

おおさか労働センター
 相談員 舛 田 佳代子

 6月9日(木)、国労会館で第3回の労働相談懇談会を開催、今回は「能力不足」が理由の解雇・雇止め、試用期間延長、労働条件引き下げへの対応について学習しました。講師は南大阪法律事務所の西川大史弁護士にお願いし、9産別・4地域・その他から計25名が参加しました。

初めに、大阪中央法律事務所の佐久間ひろみ弁護士からセクハラでの慰謝料の支払い命令、シフトカット労働者への和解金の支払い、大阪メトロの過労自殺和解、松井一郎大阪市長名による大阪市労組への誓約書の手交、学童指導員の不当な雇止めに対する和解など、注目すべき裁判等が報告されました。

学習会では西川大史弁護士が軽快でわかりやすい語り口調で事例や判例をもとに解説されました。

「能力不足」を理由にした解雇の相談では、解雇か退職勧奨かの確認と「能力不足」の度合いや判断基準、会社から適切な指導がされたかなどを確認すること。特に判断基準が成績評価のときは、相対評価か絶対評価かの確認が大事と指摘しました。そのために解雇理由証明書を求め、初期段階で能力不足の具体的理由を明らかにさせておくことが労働組合に求められると指摘。そのうえで、解雇について客観的合理的理由と社会通念上の相当性があるかの検討が必要との説明でした。

またヘッドハンティングについては、実態が通常の採用と同じ場合が多いとして、採用に至る経緯や処遇内容、在籍期間の確認。整理解雇では、人選基準の根拠、人選が客観的で合理的で公正か、事前の周知があったかなどの確認が大事との説明がありました。

また退職勧奨や労働条件の引き下げを迫られたときはハッキリと断ること。労働条件の引き下げに同意したときは、直ちに撤回することが重要(「同意は労働者の自由な意思に基づくことが必要」との山梨県民信用組合事件の最高裁判決)だと説明がありました。

さらに試用期間の延長には「延長は原則禁止、労働者の入院などで当初の期間内で判断出来なかった場合に限り許される。ただし、1回が限度で通算6ヶ月まで」との考えを、入社後6ヶ月で有給休暇が付与されることと、当初の期間内で判断出来ないのは使用者の問題であることを根拠に示されました。

西川弁護士は最後に、「能力不足」がどの程度なのか、改善の余地はないのか、評価は公正で恣意的でないかという大原則に基づいた対応が大事と強調され、組合活動や労働相談ですぐに使える学習となりました。

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