弁護士 青 木 克 也
6月11日午後、「固定残業代」をテーマとする労働法研究会を開催しました。完全オンラインでの開催となりましたが、約40名の方にご参加をいただきました。そのうち約3割は民法協の非会員の方であり、外部への周知が功を奏した結果となりました。
固定残業代制度は多くの会社で導入されており、それが有効かどうかで請求できる未払い残業代の額は大きく変わってくるため、実務上、きわめて重要な問題といえます。
研究会の内容としては、まず法政大学の浜村彰教授から、「固定残業代のこれから~最高裁判決と理論的到達点」と題する基調講演をいただきました。残業代が発生した分だけ歩合給が減額され、残業代が実質的にゼロになるという技巧的な賃金体系が問題になった「国際自動車事件」の最高裁判決(第2次判決で残業代としての有効性を否定)などを題材に、固定残業代制度に関する現在の判例理論の到達点をお示しいただきました。
浜村先生のご講演に対しては、弁護士や若手研究者の方から多くの質疑が寄せられました。固定残業代の有効要件としての「明確区分性(判別可能性)」と「対価性」の相互関係をどのように理解すべきか、国際自動車事件と同様の賃金体系のもとで残業代としての有効性が認められた、トールエクスプレスジャパン事件の大阪高裁判決につき、最高裁が(国際自動車事件第2次判決を出した後でありながら)上告不受理としたのはなぜか、といった問題について、活発な議論が交わされました。
後半は、『残業代請求の理論と実務』(旬報社)を著され、この分野の第一人者である渡辺輝人弁護士から、労働基準法施行規則の制定過程やアメリカの同種法制度をご紹介いただいた上、各弁護士が実際に取り組んでいる事例をも題材にしつつ、さらに実践的な議論が交わされました。
民法協では、年に2回程度のペースでこのような労働法研究会を開催しています。今後も皆様ふるってご参加くださいますようお願いいたします。