民主法律時報

過労死110番プレシンポ「新認定基準は救済を広げるか?」 

弁護士 垣 岡 彩 英

 大阪過労死問題連絡会では、毎年6月の父の日の前日に、全国一斉の過労死110番を行っています。この110番の前にはプレシンポジウムを行うのが通例でしたが、近年はコロナ禍のため実施することができていませんでした。今年は、6月15日の午後6時30分から、エル・おおさか(大阪府立労働センター)南館72号室にて、3年ぶりに「新認定基準は救済を広げるか?」というテーマで、過労死110番プレシンポジウムを開催することができました。

まず、松丸正弁護士から、昨年の過労死認定基準の改訂に至る大きな流れを踏まえて、新しい認定基準をわかりやすく解説していただきました。

次に、ヤミ残業による長時間勤務の下でうつ病を発病し、過労自殺した奈良県庁の職員だった故西田幹さん(死亡時35才)のお父様である西田裕一さんにお話ししていただきました。この事件については、奈良地裁で5月31日に、奈良県の責任を認めて6800万円の賠償を命じる判決が出ています。全国の県庁、市役所では、職員の勤務時間の把握は自己申告でされているところが多く、IDカード等の出退勤の客観的な記録で明らかな長時間勤務との食い違いが生じています。西田裕一さんからは、情報公開によって息子さんの勤務実態を裏付ける文書を収集されたこと、証拠を入手することの重要性の指摘がありました。

次に、府立高校の現職高校教諭である西本武史さんから、お話をいただきました。西本武史さんは、月100時間を大きく超える長時間勤務が続くなか、適応障害を発症しました。公務災害として認定され、大阪府に対する損害賠償請求訴訟を提起し、プレシンポジウム後の6月28日に同訴訟の判決が予定されていましたが、勝訴されました。

西本武史さんからは、教師の仕事のやりがいと過重労働が生じる背景、また、根本的な問題に給特法があることをお話いただきました。

今年の過労死110番プレシンポジウムはハイブリッド方式で行い、会場参加17名、Z00m参加9名と、多くの方にご参加いただきました。毎日新聞で大きく取り上げていただいたことで、新聞を見て参加された方も数名いらっしゃいました。

貴重なお話を聞くことができ、今後の過労死問題の救済と予防の取り組みを進める上で大事な機会になりました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP