民主法律時報

労働相談懇談会(おおさか労働相談センター・民法協共催)~人事権を濫用した退職強要に対するたたかい方~

大阪労災職業病対策連絡会 藤野 ゆき

2016年11月8日(火)に国労会館で2016年度第4回労働相談懇談会が開催された。
恒例となっている西川大史弁護士からの「労働情勢報告」では、電通過労自殺事件の報道とも重なるように、長時間労働問題、うつ病、自殺などの労災に関わる事件が数多く報告された。

河村学弁護士による「人事権を濫用した退職強要に対するたたかい方」の学習会では、冒頭に大阪を中心とした実状を踏まえて分析、報告があった。近年、労働者に厳しい判決が続いており、使用者と対立した場合、退職しかないとする判断がされる傾向となっている。裁判で労働者側に厳しい判断がされていることからも、労働組合による話し合いでの解決が期待される。退職強要の事例としては「労働者に不利益を強いる配転、左遷的な配転」「不当に低い人事評価、降格」、業務命令による差別、就労場所の差別(隔離部屋)」「懲戒権の濫用」などがあげられ、これらの退職強要は、解雇による紛争リスクの回避、使用者の心理的負担の回避、他の従業員や労働組合との対立の回避などが背景にあると考えられる。

退職強要に対しては、「仲間づくり」「証拠づくり」「意思づくり」があり、そのためにも労働組合の役割が重要となる。現在は労働組合のない職場も多く、労働運動の知識のない労働者も数多く存在することから、労働者への十分な配慮と教育が求められている。一方で、相談をもちかけてくる労働者とともに進めていくために、実状に応じた活動を模索しながら、一つ一つの事件を個人の利益のためだけではなく、労働者全体の利益につながるという認識をもつことが重要である。

人事権行使と裁判については、「配転」を題材として、判例をもとに進められた。配置転換とは職種や基本的な職務内容の変更、もしくは勤務地の変更をさしている。配置転換を争う場合、まず「配転命令権」が存在しなければならない。労働協約及び就業規則に定めがあるか、その根拠などが問われる。配転命令権は濫用してはならないが、退職に追い込むような不当な動機、目的で行われている事件もある。配置転換に対する争い方としては、第一に就業規則等の規定内容や配転の実態を十分に確認する必要がある。可能な限り団体交渉等での解決を目指し、その手段として裁判を考えていくことが有効であり、裁判を考えるとしても団体交渉での情報収集が重要となってくる。不当査定・降格、懲戒権の濫用、業務上の差別、その他の嫌がらせなどについても、基本は同じである。

労働者側に不利な裁判所の姿勢に対して、河村弁護士は冷静に分析しながらも、強い憤りにあふれていた。労働者を迅速に、かつ労働者にとって適切な解決に至るためにも労働組合による解決が期待されていることが熱く語られた。労働相談を受けて争議に関わることがある立場としては、訴訟になる前にやるべきことはたくさんあり、そこに真摯に向き合う必要があることを改めて考える時間となった。

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