弁護士 谷 真介
2016年11月11日~12日、北九州八幡ロイヤルホテルにおいて、第60回日本労働弁護団総会が開催され、全国の多数の労働弁護士が参加しました。
冒頭、九州大学・野田進名誉教授より、「非正規労働者の労働条件格差に関する法的対応」として基調講演がありました。安倍政権が働き方改革の目玉の一つとして「同一労働同一賃金」を打ち出す一方、労契法20条を巡って長澤運輸事件で「定年後の賃金減額が社会的に容認されている」ことを理由に労契法20条に違反しないとされた東京高裁判決が出た直後ということもあり、非常に興味深い講演でした。野田教授は、安倍政権の働き方改革でいわれる「格差是正」が経済政策の延長上で出てきたものであり、労働者・労働組合が求める格差是正とは出発点が異なることを押さえた上で、パート法や労契法、派遣法等で定められた格差是正規定について整理をいただきました。各規定は微妙に沿革や規定の仕方が異なり、要件や内容、効果等がどのように解釈されるべきかは難しい問題もあります。年末には厚労省がガイドラインを出すこととなっており注視が必要です。
総会では、働き方改革のもう一つの目玉である長時間労働是正に向けた厚労省の検討状況や労働弁護団の提言、予断を許さない解雇の金銭解決制度導入の動きについて報告と活発な議論がなされました。これをチャンスととらえ、「企業が世界一活躍できる日本」にする改革ではなく「労働者が世界一働きやすい社会」を実現するための改革にすべく全国で闘おうと強い意見が出されたことが印象的でした。
そのほか、労働審判制度の全国での運用状況や支部拡大の取組み、新派遣法下での取組み、女性労働問題、ワークルール教育の推進と法制化への運動、労働運動におけるSNS活用やストライキ活用講座・実例報告など、労働分野の様々な課題が活発に報告・議論されました。個人的には、京都の塩見卓也弁護士が報告されたきょうとユニオンiWAi分会での301日間に及ぶ職場占拠を伴うストライキによって(ストライキの正当性を認める仮処分抗告審決定を勝ち取られています)整理解雇争議を大勝利解決に導いた報告にとても感銘を受け、元気をもらいました。
なお、今年の労働弁護団賞は、過労自死事件で画期的な和解を勝ち取られたワタミ事件弁護団、退職金制度の不利益変更に関する労働者の合意を否定した最高裁判決を勝ちとられた山梨県民信用組合事件弁護団が受賞されました。
来年の総会は、日本労働弁護団60年の節目ということで、60周年記念行事を兼ねて、東京・浅草で行われる予定です。