民主法律時報

若者を守れ! 「勝ち組」さえもうつに追い込む労務管理の新たな手口―過労死110番プレシンポジウム

京都POSSEスタッフ

 6月13日(水)に、エルおおさかで過労死110番プレシンポジウムを開催しました。本シンポジウムは、大阪過労死問題連絡会と若者の労働問題に取り組むNPO法人POSSEの共催で開かれました。当日は、83名の方に参加していただき、会場は満席で立ち見も出るほどでした。

 第1部では、遺族や当事者、そしてPOSSEがそれぞれの立場から、今、若者の労働環境がどうなっているのかを話しました。

 まず、ウェザーニューズ過労自死事件で弟さんを亡くされた遺族の方が発言されました。入社してわずか6カ月後に過労自死された弟さんの働き方について報告されると、会場は騒然となりました。入社したその月から79時間の時間外労働を強いられ、最長で1カ月に232時間の時間外労働があったとのことでした。これは過労死ライン(月80時間の時間外労働)をはるかに超える働き方を入社後6カ月間で強いられていたということになります。また、長時間労働に加え、上司によるパワーハラスメントもあったことについても触れられました。メールで「なんで真剣に生きられないのだ」と上司に叱責されたり、事前に申し出た休みをとることさえ許されませんでした。さらに、ウェザーニューズは、入社後6カ月間は「予選」と称して、その期間に今後継続雇用するかどうかを見極める「お試し期間」を設けていたことが明らかになりました。それが、働く人にとって相当なプレッシャーになっていたことは容易に想像できます。事実、  月に上司に「予選通過は難しい」と言われた後に、過労自死しています。遺族の思いとして、企業は社員の労働時間管理や健康管理を責任をもって行うこと、そして、過労死根絶のための法整備や体制構築を求めると訴えました。

 次に、NPO法人POSSE川村遼平事務局長が、POSSEに寄せられている相談に基づいて、若者の心身を追いつめる職場の状況について話しました。POSSEには今年の1月から5月までに192件の労働相談が寄せられており、そのうち心身不良を伴うものが55件(29%)あったと報告しました。そして、その背景にはブラック企業の問題があると述べました。ブラック企業には、①ウェザーニューズのように、採用後に新たに選抜を行う選別排除型、②体を壊すまで働かせる消耗使用型、③職場環境自体が崩壊している秩序崩壊型の3つの類型があると説明しました。選別し排除する際にパワハラして自分から辞めるように仕向けるといった手法や、あるいは長時間労働をさせて使い切るといった働かせ方が、職場うつにつながっていると話しました。そして、20年以上かけて育成した人材を1年でうつに追い込み、その治療費や新たな人材を育成するための費用を社会に転嫁するブラック企業こそがフリーライダーだと述べました。ブラック企業であることが合理的ではないように、外部から規制をかけていかなければいけないと訴えました。

 そして、POSSEに相談に来られ、現在は大阪のユニオンに加入されて会社と交渉中の当事者からの報告がありました。「絶対にリストラしない」と言われて入ったIT企業から退職勧奨を受けており、それが原因でメンタルを患ってしまったということでした。このケースは、まさに①選別排除型にあたるでしょう。

 第2部では、昭和女子大学特任教授の木下武男先生より、「若者の過酷労働と貧困」というテーマで職場うつを生み出す仕組みについてご講演いただきました。近年、過酷な労働、過労死、精神障害が特に若年層にまで広がっていることに触れられました。そして、過労死が起きる理由を説明するために、日本型雇用システムの本質であるメンバーシップ型契約について話されました。職務の範囲や責任が明確に規定されているジョブ雇用契約とは違い、職務の限定のない企業のメンバーになるための契約がメンバーシップ型契約だと述べ、それゆえ、企業は労働者に対して絶大な指揮命令権を行使することができていると説明されました。だから、労働運動の課題としては、単に賃上げを求めるのではなく、会社の人事権や指揮命令権を制限することが必要だと強調されました。そして、過酷労働を克服するためには、やはり労働時間の短縮が必須だと述べられました。労働時間の短縮が、過労死を防ぎ、少子化対策や失業対策・雇用創出にもつながるとのお話でした。

 私が印象に残っていたのは、木下先生のお話のなかで出てきた過労死を出した企業に対する逆ユニオン・ラベル運動による規制というものです。やはり過労死を出した企業を徹底的に追い詰め、二度と同じことがないように歯止めをかけていくことが必要だと思います。過労死を出すような企業はこの社会に存在する権利は無いというお話は、まさにそうだと感じました。現在、家族の会などが取り組んでいる過労死を出した企業名公表裁判は、その点からも非常に重要な裁判だと思います。また、過労死防止基本法の制定を通じて、若者を使い捨て、死ぬまで追いつめる企業の働かせ方に対して、社会的に規制をかけていくことが最重要課題であると思います。
 今回のシンポジウムには、弁護士や労働組合、家族の会、労働NPOなど、労働問題に取り組む様々なアクターが集結しました。その結果、今回のようなイベントを成功させることができたと思います。今後も、様々な領域で労働環境の改善に向けた行動をとっていくことで、過労死のない安心して働ける社会を構築することができるのだと思います。

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