新型コロナウイルス 外国人労働者整理解雇事件のご報告

2020年06月15日

弁護士 加苅  匠

1 はじめに

国際的な展示会やイベントの営業・企画・会場設営等の業務に従事していた外国人労働者3名が、新型コロナウイルス感染症の影響で会社の売上げが減少したことを理由に整理解雇された事件について、2020年5月29日に雇用契約上の地位の確認等を求めて大阪地方裁判所に労働審判を申し立てました。

2 事案の概要

外国籍(ドイツ国籍、アメリカ国籍、オランダ国籍)である申立人ら3名は、2017年以降、大阪府内にある国際的な展示会等のデザインや企画・会場設営等を営む会社に勤務し、営業や催場デザイン・企画・製作管理等の業務に従事してきました。申立人らのうち2名は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格により日本で生活していました(1名は「日本人の配偶者」)。

2020年2月頃より新型コロナウイルスの感染拡大が問題となり、3月以降に予定されていた国際的な展示会等が延期又は中止となってしまいました。会社は業務が縮小したことを理由に、2020年4月1日、申立人らに対して休業を命じました。

2020年4月22日、会社は、同社に勤務する外国籍従業員5名全員に対し、新型コロナウイルス感染拡大の影響により「会社の運営上または天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業継続が困難なとき」という解雇事由にあたるとして、5月 日をもって解雇する旨の解雇予告を通知しました。

申立人らは突然の解雇予告通知に驚き、会社に対して会社の経営状況や経費削減等の措置を行ったかどうかについての説明を求めるとともに解雇予告の撤回を求めましたが、会社は具体的な説明も解雇予告の撤回も拒否しました。

申立人らは、従業員に対して十分な説明を行わず突然解雇に踏み切った会社の態度に強い憤りを感じ、また日本での生活を続けるためにも、解雇の無効を争って雇用契約上の地位の確認を求める労働審判を申し立てました。

3 新型コロナウイルス感染症の影響を理由とする解雇の有効性

新型コロナウイルスの影響により一時的に売上げが減少したとしても、それだけで解雇が許されることはありません。会社の経営状態を理由とする整理解雇の場合、労働者側の責任とは言えませんので、①人員削減の必要性があること、②解雇回避努力義務を尽くしたこと、③人選が合理的であること、④説明協議を尽くしたこと(手続の合理性)が認められなければ、解雇権の濫用にあたり無効となります(労働契約法 条)。特にコロナ禍における解雇については、厚生労働省が企業に対して「雇用調整助成金など、政府の支援策を活用いただき、できる限り労働者の雇用の維持に努めていただくようお願いします」(厚労省Q&A(企業の方向け)参照)と特別の要請を出し、雇用調整助成金の大幅な要件緩和など制度的な手当を整備していますので、各種助成金や支援策等の活用を含めて解雇回避努力を尽くすことが求められています(上記②)。

本件では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時的には売上げが減少しましたが、3月以降のイベントの大半は中止ではなく秋以降に延期となっているにすぎないため将来的な売上げの見込みがないとは言えませんし、コロナ禍となる以前の売上げが相当程度(年商4~5億円)あったことから、直ちに「事業の継続が困難」であり、人員削減が不可欠といえる状況ではありませんでした(上記①)。

また、会社が各種助成金等を活用したような形跡はなく、従業員の解雇を回避するための措置をとったことを示す事情もありませんでした(上記②)。

さらに、解雇にあたって、従業員に対し十分な説明がなされることもありませんでした(上記④)。
したがって、本件解雇は、客観的合理的な理由も社会通念上の相当性も認められず無効であると考えます。

4 おわりに

コロナの影響を理由に解雇や雇止めにあった人は全国で2万人以上に上り、今後も増えることが予想されています。申立人らの生活を守ることはもちろん、これ以上コロナを理由とする安易な解雇や雇止めを増やさないためにも、この労働審判を闘い抜きたいと考えています。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

(弁護団は、奥田愼吾、川村遼平、加苅匠)