民主法律時報

第49回働くもののいのちと健康を守る学習交流集会「いのちの格差」はどこから?~分断された働き方を考える~

弁護士 馬越 俊佑

第1 はじめに
2016年11月5日に、80名が参加し「第 回働くもののいのちと健康を守る学習交流集会」が開催されましたので、報告致します。

第2 午前の部
1 開会挨拶
初めに、川辺和宏実行委員長より、労働組合として何ができるのか、働きがいのある職場をどう作っていくのかが課題だと思っています、労働者の権利を守るという大きな闘いをしていきましょう、との挨拶がありました。

2 記念講演『安倍政権の「働き方改革」を斬る』
続いて、中村和雄弁護士の記念講演『安倍政権の「働き方改革」を斬る』がありました。
初めに若者の労働状況について、中村先生が担当しておられる事件を例に挙げて本当にひどい状況だとの報告がありました。

また、安倍政権の「働き方改革」は、これまで私たちが掲げてきたスローガンとほぼ同じであり、安倍首相がこういうことを言わないといけない状況になっているということを確認しなければならない、とのことでした。
2016年5月18日に出された「ニッポン一億総活躍プラン」は実現会議のメンバーに労働者側は連合会長一人しかいない。つまり、労働者側を切り離して、労働者を守るのではなく、経営者側から働き方を変えていこうと言っている。しかし、逆に言えば、労働者の賃金を上げるしかないという状況に来ていることを確認しなければならない、とのことでした。

その他、長時間労働の是正やインターバル規制(一日終わったあとに次の仕事までの時間を確保するという規制)の必要、高齢者の就労促進、最低賃金の引き上げ、同一労働同一賃金について、わかりやすくご講演いただき、最後に「労働組合は憲法による保障があります。労働組合は社会に必要だからです。組合として、全労働者のために他の市民団体と一緒になって運動をしていきましょう。」との激励の言葉がありました。

3 特別報告
(1) 福祉・介護職場の実態と労安活動
福保労の小林聡美さんより、福祉・介護職場の実態について以下のとおり報告がありました。
私は民間の社会福祉法人で障害者の介護をしていますが、社会福祉の現場は「自己責任」のもと、攻撃を受けてきました。しかし、労使が協力して、一人の介護者を職場復帰させた事例があります。
私たちは大阪社会医学研究所に協力を仰ぎ、労使が協力して職場全体で安全衛生活動に取り組みました。専門的な知識と理論をもった社会医学研究所の助力が必要不可欠であったと思います。労使共同での労働安全衛生活動が必要です。今後も取り組んで行きたいと思っています。

(2) いじめ・パワハラ訴訟支援の訴え
電気情報ユニオンより、いじめ・パワハラ訴訟支援の訴えについて以下のとおり報告がありました。
組合活動が原因でパワハラのターゲットとされ、社長らの威圧的な面談や、社員らの暴言等により精神疾患を煩い、現在不当解雇裁判とパワハラ労災裁判が継続しています。ご支援お願いします。

(3) 争議の訴え
ア 組合事務所退去事件について
不当労働行為を認めた地裁判決を高裁判決はひっくり返してしまいましたが、最高裁への上告受理に向けて活動を続けています。是非とも裁判に勝って労働者の砦となる組合事務所を守っていきたいので、ご支援の方をよろしくお願いします。
イ 大阪医科大学事件
原告は、フルタイムのアルバイトとして正職員と同じ仕事をしていましたが、賃金ははるかに低いものでした。そこで、労働契約法 条に基づいて差額請求を行っています。来年の春には証人尋問があると思います。是非ともみなさんの応援を頂きたいです。

第3 午後の部
1 分科会
午後からは、第1分科会「職場のメンタルヘルス」、第2分科会「安全問題」、第3分科会「労働安全衛生活動」の3つの分科会が行われました。私は第2分科会(安全問題)に出席致しましたので、ご報告致します。

2 平成28年度府下での事故発生・労災認定状況の傾向と分析
まず初めに、全労働大阪基準支部の丹野弘さんより、平成 年度における大阪府下での事故発生状況と労災認定の状況について報告がありました。
平成 年以降労災死傷者件数の減少がほとんどないことなどが報告され、対策について議論となりました。
参加者は 名で、各人の労働現場における実態が報告され、組合としては、労働災害があった場合には、どんな状況で、どういった災害があったのかという情報を広げて、各労働者と共有する必要があるとの意見が挙げられました。また、増加傾向にあるメンタルヘルスの問題について、同僚とのコミュニケーションをとることが重要であるが、若者とのコミュニケーションの図り方について難しい部分があるとの意見もありました。

3 郵政職場の実態と労安活動

次に、郵政ユニオンの森田さんより、郵政職場の実態について報告がありました。
時間労働が4日連続で続く問題があったが、組合からの要求により、連続して2日になることになった。しかしながら、組合からは廃止を求めているとの報告や、労働相談ではパワハラの相談が多かったなどの報告がありました。

第4 閉会集会
1 各分科会からの報告
各分科会から議論についての報告がありました。どの分科会でも、各人から労働現場の状況について報告があり、活発な議論となったようです。
2 閉会挨拶
最後に村田浩久事務局長より、閉会の挨拶がありました。
それぞれの職場に持ち帰り、よりよいものにしていこうということで挨拶にしたいと思います、とのことでした。

第5 感想
各労働現場の状況が聞ける大変貴重な学習会となりました。中村先生の講演も大変わかりやすく、安倍政権の狙いや危険性を改めて確認できました。参加されなかった方もぜひ次回はご参加ください。

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