民主法律時報

断じて許せぬ戦争する国への道・集団的自衛権――今こそ9条をまもる国民大運動を

弁護士 橋 本   敦

1 高まる国民の抗議と怒り
安倍首相が平和憲法を踏みにじって集団的自衛権を認める閣議決定を強行したことに、今、国民の怒りは大きく広がっている。
2014年6月30日と7月1日に、総理官邸を囲んでの抗議の波は数万人にも達した。「戦争する国への道は許すな!」と今国民の怒りとたたかいは、全国津々浦々に大きく広がっている。
日弁連・自由法曹団をはじめ、抗議の声は、たちまち全国でかつてないほど多数に及び、憲法会議も、去る7月2日に「こうして自衛隊による海外での武力行使の歯止めは取り払われ、自衛隊員が海外で殺し、殺されることになり」「世界に誇るべき日本国憲法第9条のさらなる破壊に向けたこの歴史的暴挙を、憤りを込めて糾弾し、その撤回を求める」との緊急の談話を発表した。
広がる国民の怒りの前に、安倍内閣の支持率も、「読売」7月4日付の世論調査で48%と第2次安倍内閣発足以来、初めて5割を切った。
まさに、戦争か、平和かの戦後最大の歴史的岐路にある今、我々は平和憲法をまもるために、かつての60年安保闘争を上回るほどの国民的大闘争を進めねばならない。

2 今日の戦争する国への道・歴史の逆流の根源にあるもの
吹田9条の会は、去る6月24日、詩人のアーサー・ビナードさんを招いて「国のペテンに騙されるな! 集団的自衛権の本質を暴く」講演会を開催した。ビナードさんのすぐれた話術により、まことに痛快な講演会であったが、その講演を6月26日の朝日朝刊は次のように伝えている。
「私たちは、政治家の言葉に騙されてはいけません。集団的自衛権は、いわば『包装紙』。破ると『戦争』という中身が出てくるのです。オバマ大統領も『集団的自衛権の行使容認を支持』と報じられました。僕は『支持』じゃなく『指示』だったととらえています。集団的自衛権を認めてしまったら、米国の言いなりになるだけ。『属国』のようになってしまいます。・・・日本には、そんな国になって欲しくない。」
アーサー・ビナードさんは、詩人としてさりげない一言で、見事にこの今日の事態の本質を明らかにした。日本はアメリカの目下の同盟軍となって戦争する道へ進む「日本はそんな国になって欲しくない。」と話してくれたことに深く共感する。
私は、このビナードさんの講演を聞いていて、今日の事態の真相をよく把握されていることに共感した。そして、私は、次の事実を思い起こした。
その一つは、2005年2月に、日米安全保障協議委員会(日米双方の防衛庁長官と外務大臣の2+2会議と呼ばれているもの)でのアメリカのラムズフェルド国防長官の驚くべき公式の場での次の発言である。
「日米の平和のための協力活動は、血を流してこそ未来につながる尊いものになる」
つまり、日米安保条約は、アメリカとともに日本も血を流してこそ本物の日米同盟になるのだと驚くべき発言をしたのであった。
そして、もう一つは、アーミテイジ米国防次官補がまとめた「米国と日本の熟成したパートナーシップに向けて」と題した2000年の報告書で「日本が集団的自衛権を禁止していることは、日米の同盟間の協力にとって重大な制約となっている。この禁止条項を取り払い、そのことでより密接で効果的な日米安保協力ができる」と書いていることだ。アーミテイジは、また「憲法9条は、日米同盟の邪魔物だ。日本は早く、この邪魔物を取り払え」と言っているのだ。
この二つの事実を顧みるだけでも、今日の平和憲法の蹂躙・戦争する国への道という重大な事態の根源には、日米安保条約があることが明白である。
こうして、安倍内閣の集団的自衛権の承認という憲法9条破壊の暴挙の本質と背景にあるもの―それは日本に対米従属を強いる安保体制であることが明らかである。
いよいよこれから、日本の宝・平和憲法9条をまもり、「青年よ、銃をとるな」集団的自衛権による戦争する国への道は断固許さぬと大きなたたかいを起こさねばならない。そしてわれわれは、この国民的たたかいで、日米安保条約破棄という重大な視点を忘れてはならない。アーサー・ビナードさんも、日本はアメリカの属国のような国にはなって欲しくないと言っているではないか。

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