民主法律時報

泉佐野市不当労働行為事件で全面勝利解決

弁護士 増田 尚

 6月23日、泉佐野市職員労働組合・同現業支部と泉佐野市との間で、一連の不当労働行為につき全面的に解決を図る合意をして、大阪地裁(内藤裕之裁判長)での取消訴訟が市の取下げによって終結した。残る2件の取消訴訟(最高裁、東京地裁)も、合意に基づいて市が取り下げて終結した。千代松市長が就任してから6年あまり、最初の府労委への救済申立てから4年あまりで、一連の不当労働行為に対して実質的な救済が図られ、労使関係の正常化への第一歩を踏み出す勝利解決を図ることができた。

事の始まりは、職員給与削減を公約に掲げて当選した千代松市長が当選直後の2011年5月に、20%もの大幅な給与削減を市職労に提示し、説明も協議もしないまま、条例案を議会に上程することを強行したことであった。議会では、削減率を8%に修正されたものの、組合との協議を軽視・無視し、組合の存在意義を否定する強権的な手法は、これまでの労使関係を破壊するものであった。

組合は、こうした一方的な給与削減に対し、公平委員会への措置要求運動を展開した。8%の給与削減は、若年の職員の中には、月例給で生活保護基準を下回る者も出るなどの異常なものであり、千代松市長の強引なやり方も相まって、職員に怒りの声が広がり、全職員の7割に相当する515名もの職員が措置要求を行った。市公平委員会は、2012年4月10日の判定において、結論として棄却したものの、「当局側が労使交渉において十分な説明を行ったとは評価しがたい」、「法 条の趣旨(職員団体に対する当局の交渉応諾義務等)から見て遺憾な面がないではない」などの異例の意見を付して、市の姿勢を厳しく批判した。

しかし、千代松市長は、団交軽視・組合否認の不当労働行為をエスカレートさせていった。団体交渉でまともに説明をしないまま打ち切って、給与削減や勤務条件の不利益変更を一方的に強行したり、組合事務所の使用料減免申請を承認せず、使用料を徴収する処分をしたり、組合費のチェック・オフに際し手数料を徴収するよう要求し、組合がこれに応じなかったことを理由にチェック・オフを中止したり、組合攻撃を繰り返した。組合は、これらの不当労働行為に対し、6件もの救済申立てを行って、不当労働行為の是正や、市への謝罪を求めてたたかった。

6件もの救済申立ては(併合により4件が並行して審査された)、やむにやまれぬ選択の結果ではあったが、日常的な組合活動や職務をこなしながら、労委闘争を進めることは、相当な負担であった。しかし、千代松市長による強権的な手法の異常さを相乗的に浮き彫りにして、府労委への市長に対する厳しい姿勢を貫かせることができた。府労委は、組合からの2度にわたる実効確保措置の申立てに対し、口頭で、市に対し、労使紛争を拡大させないように要望を行った。これにより、市は、事務所の使用料をめぐっては救済申立ての結果を待つとする暫定的な合意を組合と行ったり、チェック・オフの中止の時期を遅らせたりする対応をせざるを得なくなった。4件の救済命令すべてで、市の不当労働行為が認められ、最後の件では、ポスト・ノーティス(市庁舎玄関への掲示)を命じるまでに至った。

こうした労働委員会の厳しい判断は、市当局を追い込んでいった。市は、中労委への再審査申立てや、取消訴訟を提起したが、議会でも、紛争を長期化させ、予算を支出することについて厳しい意見が目立つようになった。中労委命令の取消訴訟提起の際には、公明会派の議員が退席するなどの反応も見られた。また、一方的に削減した夏期休暇の日数も、組合との交渉によって、順次、回復することとなった。

このような不当労働行為の該当性は、司法判断でも維持された。しかし、チェック・オフに関する大阪地裁、大阪高裁の各判決は、地公法適用職員は労働委員会の救済を申し立てることができないとする誤った解釈をして、いわゆる混合組合に対しても救済を図ってきた労働委員会の実務を否定し、公務員労組に分断を持ち込む不当な判断をした。このような不当判決に対し、控訴審、上告審と弁護団を拡充し、上告審では総勢81名の代理人による上告受理申立て理由書を提出した。

そうした中で、4件目の府労委救済命令の取消訴訟で、チェック・オフ事件で判決を出した内藤裕之裁判長からの打診で、進行協議により、解決が探られることとなった。労使間での協議を詰め、裁判所からの合意勧告を受け、労使双方がこれを受諾し、①市が、各救済命令において不当労働行為と認定されたことを受け止め、今後、不当労働行為を行わないことを誓約し、相互理解に立って、円滑な労使関係の確立に努めること、②チェック・オフも全組合員につき無償にて再開すること、③組合事務所の使用料についても全額減免とすること、④給与・勤務条件についての組合からの団交申入れに対し、市は、合意達成の可能性を模索する姿勢を持って、根拠となる資料を可能な限り提示して説明を尽くすなどして誠実に対応することなどを約束し、すべての取消訴訟を取り下げて終結させることを合意した。チェック・オフについて法適用の区別なく全組合員につき無償での再開をさせたことは、大阪地裁・高裁の不当判決を事実上覆し、実質的な労働基本権の回復を図るという大きな成果を得ることができた。

市が、この合意(和解)によって、不当労働行為を改め、職員の給与・勤務条件に関しては労使の協議を十分に尽くし、団結権を保障する姿勢に転換することになれば、泉佐野市はもちろん、各地の自治体においても、労働者の権利と住民の福祉をともに発展させる流れを加速させることにつながるものである。府下や他府県でも少なくない自治体で公務員労働組合に対する支配介入がなされていることからすれば、公務員労働組合の団結権保障にとって本件合意の持つ意味はきわめて重いというべきである。

本件闘争については、市民連絡会における市民との共同、支援共闘会議での民間労組を含む各層からの支援があり、勝利解決を図ることができた。また、上告審から民法協会員を中心として多くの弁護士に代理人に加わってもらったことが、チェック・オフの不当判決を事実上覆す成果を獲得することにつながった。これらの支援に対し、紙面を借りて、改めて感謝を申し述べる次第である。

弁護団は、大江洋一、半田みどり、谷真介各弁護士と当職であり、チェック・オフ取消訴訟の控訴審から豊川義明、城塚健之各弁護士に加わっていただき、同上告審から宮里邦雄、徳住堅治両弁護士などに加わっていただいた。

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