民主法律時報

長時間労働・嫌がらせ・非正規差別を許さない―― 四国名鉄運輸の「働かせ方」を問う訴訟を提起

弁護士 井上 耕史

1 事案の概要

被告会社である四国名鉄運輸は貨物運送事業者である。原告は同社の「臨時社員」として2004年2月に入社し、以後「パート社員」「契約社員」と呼称は変わったが、毎年3月に1年契約の更新を繰り返し、トラックを運転して集配業務に従事していた。集配業務を行っていた22名の従業員のうち原告だけが契約社員で、残り全員が正社員であったが、業務内容には差異がなかった。正社員には賞与支給や時効消滅した年休の買取制度があったが、原告には適用されなかった。

原告は恒常的な長時間労働を強いられており、1か月100時間超の時間外労働も何度もあった。2013年6月、原告は業務中に目まいを起こして転倒して頭部を打撲負傷した。被告会社から業務復帰を求められて同年7月18日に復帰したものの82時間もの時間外労働により症状が悪化したため、8月12日から年休を行使して自宅療養するとともに、労基署に未払残業代申告や負傷について労災申請(後に業務外認定)を行った。

すると、被告会社の上司らは、原告の申請を妨害する等様々な嫌がらせをするようになり、同年10月28日には原告に対し懲戒解雇をちらつかせて退職を強要するに至った。こうした長時間労働や嫌がらせ等により、原告は鬱病を発病し(本件業務災害)、療養のため休職を余儀なくされた。2014年1月、被告会社は休職期間満了を理由として原告を退職したものと扱った(本件解雇)。その後、原告は本件業務災害について労災申請を行い、2015年8月に労災認定された。原告は現在まで療養中である。

そこで、原告は、 ①労災休業中の解雇・雇止めは無効であることを理由とする地位確認、②原告が賞与支給額及び年休買取りにおいて不利益を受けているのは労働契約法 条違反であることを理由とする差額分支払、③本件業務災害についての被告会社の安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償、をそれぞれ求めて、本年4月25日に大阪地裁に提訴した。

2 本件の特徴

過労・パワハラによる精神疾患を発病した事例において、使用者に対し損害賠償を請求する裁判は少なくない。本件もその一つではあるが、併せて有期契約の効力を正面から問うという点に特徴がある。

第一に地位確認の点。労災により療養中の解雇(中途解約)であれば労基法19条により無効である。ところが本件の場合は有期契約であるから、中途解約無効だけでは足りず、その後も契約が更新されたといえなければならない。この場合にどのような法律構成で救済すべきかが問われる。

第二に労働契約法20条違反に基づく請求の点。賞与格差の不合理性が大きな争点である。さらに、本件では休業損害についても従前と同等の給与とは別に正社員と同等の賞与相当額を請求している。全く前例のない領域である。

3 企業と政府の「働かせ方」を問う訴訟に

安倍政権は、本年3月18日に「働き方改革実行計画」を策定した。しかし、「同一労働同一賃金」と言いながら非正規の賃金格差には殆ど手をつけていない。また、「長時間労働是正」と言いながら、いわゆる過労死ラインの残業を認める上に、運転業務は5年間野放しとするものである。これでは原告のような被害が増え続ける。この裁判を通じて、被告会社のみならず、企業と政府の「働かせ方」に対しても異議を申し立てるたたかいにしたい。

(弁護団は、上出恭子、河村学、井上耕史)

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