民主法律時報

労働基本権を蹂躙し、労働委員会制度を形骸化する不当な命令に抗議する―大阪市・大阪運輸振興 不当労働行為事件

全日本建設交運一般労働組合運輸一般支部
執行委員長 松 澤 伸 樹

 大阪府労働委員会は2013年8月22日、大阪市及び大阪運輸振興の不当労働行為事件について「大阪市に対する申立ては却下する」「大阪運輸振興に対する申立ては棄却する」との命令をおこなった。府労委命令は、「はじめに却下、棄却ありき」の不当なものであり、憲法で保障された労働基本権を蹂躙し、労働者・労働組合の救済機関である労働委員会制度を形骸化するものであり、断じて容認できるものではない。  

 2011年6月、大阪運輸振興で建交労の分会が結成された。会社は、7月14日の団体交渉において組合掲示板を設置すると回答し、分会は、団体交渉での回答にもとづいて、同年7月30日、会社に掲示板設置の許可願いを提出し、会社の4営業所に設置してきた。分会は、組合掲示板を積極的に活用し、職場や支部での要求にもとづく旺盛な宣伝活動をおこないながら仲間との団結と共同をひろげ、信頼をかちとってきた。

 大阪運輸振興は2012年2月27日、突然、「交通局より平成24年4月1日以降、組合掲示板の設置についての使用許可を更新しない旨の通知があったので、本件掲示板について同年3月31日までに撤去されること」との通知をおこなってきた。支部と分会は、「組合掲示板撤去」が組合に対する支配介入であることから、直ちに大阪市と大阪運輸振興に対し、団体交渉の申入れを行うとともに「掲示板撤去」の通知の撤回を要求した。
 しかし、団体交渉申入れについて大阪市は、「本件につきましては、当局と大阪運輸振興との間における当局所有の使用に関する事項であるため、貴組合との団体交渉に応じる意思はございません」と言って拒否してきた。一方、大阪運輸振興は「オール大阪の中で組合への便宜供与はしないと交通局が決めたことなので会社としてどうすることもできない」と主張し、組合の要求を拒否してきたのである。

 そもそも大阪市及び大阪運輸振興の「組合掲示板撤去」の不当労働行為事件は、2011年12月に大阪市長に就任した橋下市長が、労働組合を嫌悪し、破壊・弱体化させるために行ってきた暴挙である。それは、当時の大阪市交通局長が2012年1月13日、橋下市長に対し「2011年末に問題となっていた労働組合への施設使用に関する便宜供与を廃止することとし、各営業所に通知した」旨の電子メールを送信し、橋下市長が「了解しました。局長のマネジメントに敬意を表します。引き続きよろしくお願いします」と返信していることからも明らかである。

 私たちは、「組合掲示板の使用許可の更新拒否」が橋下市長による組合嫌悪の意思にもとづくものであり、大阪市が実質的な支配力ないし、影響力を及ぼし得る地位にあることを明確にし、大阪市が労組法上での使用者の立場にあることを明らかにしてきた。また、大阪運輸振興が大阪市交通局に同調し、組合掲示板撤去を通知してきたことが労働組合に対する支配介入であることを明確にしてきた。
 これに対して、府労委命令は、橋下市長らの組合嫌悪の言動を意図的に欠落させる一方、組合が言うような「外延が幾らでも広がり得る開放的な概念によって同法にいう『使用者』を定義することは相当ではない」とするとともに、掲示板設置の継続が事実上できなくなったこと、大阪市が大阪運輸振興に対して一定の影響を及ぼし得る地位にあるとは言えると判断しながら、「会社に雇用される労働者の基本的な労働条件等について、会社と部分的にも同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとは言えない」として、大阪市の使用者性を否定し、不当労働行為の救済申立を却下した。また、大阪運輸振興の不当労働行為についても、「組合掲示板の使用許可の更新拒否」にもとづく組合掲示板撤去の通知が、組合の弱体化や組合活動に対する介入を企図としたものとみることはできない」と判断し、申立を棄却した。

 労働者・労働組合に対する支配介入や団体交渉拒否などの不当労働行為について、大阪市及び大阪運輸振興のいずれもが責任を問われないことはあり得ないことであり、このような行為がまかりとおるならば、労働者・労働組合の権利が蔑ろにされることは火を見るより明らかである。
 よって、労働者・労働組合の権利を確保するため、大阪市及び大阪運輸振興の不当労働行為を明らかにするとともに、府労委命令の誤りを正し、不当労働行為救済を必ずかちとることを決意するものである。そのために全国の労働者・労働組合との共同と団結を強め、奮闘するものである。

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