民主法律時報

第4回労働相談学習会報告 シフトカットへの対応について~契約時に労働時間や日数の明記を!!~

おおさか労働相談センター 事務局次長 宮 崎   徹

2022年9月22日(木)午後6時30分から「第4回労働相談学習会」が大阪国労会館3階大会議室で行われました。当日の参加者は、7産別、6地域組織、弁護士・その他で計27名でした。

学習会は、おおさか労働相談センター事務局長の福地氏の司会進行で始まり、まず労働情勢報告が佐久間ひろみ弁護士(大阪中央法律事務所)からありました。

6月~9月中旬までの労働問題に関する判例や訴訟の動向について、違法な派遣労働が常態化していた東リ(住宅建材大手)で労働者5人が直接雇用関係があったとして訴えた「見なし制度」をめぐる裁判で大阪高裁・控訴審判決に続き、最高裁が6月7日に東リの上告を棄却し、原告勝訴の判決が確定しました。大阪地裁では長時間労働で適応障害を発症した大阪府立高校教員の訴えを認め賠償命令が下されました。労働者側の勝訴もあった反面、東北大学での雇い止めの取消を求める裁判では敗訴、など一進一退の状況が報告されました。

続いて、「シフトカットへの対応」というテーマで冨田真平弁護士(きづがわ共同法律事務所)より講演いただきました。まず、シフト制について、「あらかじめ具体的な労働日、労働時間を決めず、シフト表などにより柔軟に労働日、労働時間が決まる勤務形態」であることが説明され、問題点として事実上使用者にシフト決定権限があり、①シフトに入りたくないのに無理矢理シフトに入れられる、②一度確定したシフトを後から変更される、③シフトに入れてくれない(シフト外し)などによって労働者側に不利益な事態が発生していることが具体的に報告されました。

特にシフト外し、シフトカットは時間給や日給制の労働者にとってシフトが減らされることは、収入減に直結しており、生活を直接脅かす重大な問題です。このような不利益を恐れて職場での権利行使が萎縮したり、ハラスメントに対して声を上げにくくなったりしています。厚生労働省は、このような事態を受けて今年1月に「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を発出しています。(問題点について労旬2013号で指摘)

一般論として、シフト制労働者の場合、シフトが組まれていない日について休業手当の支払義務が無いと言う厚生労働省の誤った見解が発表されたため、休業手当を一切支払わない企業が多く存在しています。この状態を改善するためには労働契約を締結する際に週もしくは月に働く日数や労働時間の明記を求めること、できない場合でも勤務実態を元に会社側の「シフト決定権限の濫用」を証明し、賃金請求できる可能性があります。

シフトカットに苦しむ労働者からの相談には、使用者に対して働き続ける意思があり、シフトを減らされる前の条件で働くことを希望し、シフトカットに同意していない事を明確に伝えることが第一歩です。同意書にサインをしてしまった場合でも同意の有効性を争うことができます。労働組合がある職場では、シフト決定の際に、①事前に労働者の意見を聴取、②確定したシフトの変更申し出や変更する際の期限や手続(労使合意が必要)、③労働可能性のある最大日数、時間数、時間帯、④目安となる労働日数、労働時間を必ず定めておくことが大切です。

まとめとして、シフト制労働者の権利保障のためには、今後労働組合の積極的な取り組みと根本的なシフト制労働者の保護法制定が不可欠と結ばれました。

参加者からは、相談事例の報告があり、「使用者側が大幅なシフトカットをしても補償しなくても良いとされる合理的理由とは」などの質問がありました。回答としては「経営が行き詰まり、企業の存続が危うい場合と言えるが、多くの助成金制度の活用が充分に行われたか。休業手当の支払いの検討や努力は、などハードルは高い。しかし、実際のところ事例が少なく明確な判断はしづらい」とのことでした。
労働者を取り巻く状況は厳しくなる一方です。さらに学習と討論を積み重ね、未組織労働者の相談や要望、疑問に対応できるよう奮闘しましょう。

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