民主法律時報

必要生計費試算調査を取り組んで

全大阪労働組合総連合 事務局次長 鴻 村   博

 大阪春闘共闘と大阪労連が行っている「必要生計費試算調査」は、「普通の生活」「健康で文化的な最低限度の生活」とは、具体的にどのようなものなのかを科学的に試算・調査し、各世代での必要経費と生活状態を示していくものです。その結果は、「賃金闘争や職場や地域で、要求運動をつくる根拠」、「全国一律最賃制実現や最低賃金の水準」、「最低保障年金や生活保護のあるべき水準」など、様々なたたかいに活用していくことができるようになります。具体的な調査の内容は、生活のパターンを調べる「生活実態調査」、持ち物をどれくらい所有しているのかを調べる「持ち物財調査」を実施し、それらの結果をもとにふつうの暮らしに必要な費用を一つひとつ丁寧に積み上げる「マーケット・バスケット方式」を使い算定しました。

 私たちは、集約目標1万を目指して取り組みましたが、コロナ禍の中で、テレワークで組合員に会えない、自分の職場以外に入っていけないなどの制限がかけられるなど、調査用紙を渡し説明することが困難な職場も少なくありませんでした。しかし、そうした中でもWeb会議に挑戦するなど知恵を出し合い工夫し、必要生計費試算調査の意義を語りすすめました。少なくない組織で、職場や単組単位で回収状況を把握しすすめることができたのは、役員が現場に繰り返し連絡し、時には足を運び、数の追求だけでなく、組織強化の課題を握って離さず、組合員の参加を追求したからに他なりません。その結果、全ての産別組織から調査用紙の回答が集まり、合計で9501件となりました。また、組織の枠を超え、中立の労働組合をはじめ様々な府的団体の協力を得られたことが、大きな力になりこの数字に到達しました。

 2022年2月4日に示した調査結果は、大阪で働き暮らしている一人暮らしの若者634名分のデータの分析結果です。

大阪市内で若者がふつうに一人暮らしをするためには、男性=月額24万4951円、女性=月額24万2110円(ともに税・社会保険料込み)が必要であると示されました。これは年額に換算すると約300万円となります。参考ですが、東京都(北区)でも同様の調査結果が公表されていますが、男性=月額24万9642円、女性=月額24万6362円でした。

この生計費で想定した「ふつうの暮らし」の内容は、モデルケースとして、年齢は25 歳で、大学卒業後就職し、勤続年数が3年である労働者を想定し、東淀川区の25㎡の1K・エアコン付き、管理料込みの家賃4万8000円の部屋に住み、通勤費は公共交通機関を使い約7000円としました。冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、掃除機などの家電製品は、量販店で最低価格帯のものでそろえました。1か月の食費は、男性=約4万4000円、女性=約3万5000円となりました。朝晩は家で食べ、昼食についてはコンビニなどでお弁当を購入(1食あたり500円)しています。そのほか、月に2回、同僚や友人と飲み会・会食(1回当たりの費用=3800円で、女性はこれにランチが1回追加される)を行っています。ちなみに男女で食費に差があるのは、男性のカロリー摂取量の方が大きいからです。

余暇の過ごし方では、休日は自宅での休養に充て、月に4回は恋人や友人たちと郊外のショッピングモールに行って、映画・ショッピングを楽しむために8000円支出しています。そして、年に2回1泊以上の旅行をし、その費用は年間7万円です。

そうした生活実態や持ち物調査、合意形成会議で積み上がった総計が、1か月で必要な生計費となります。ワーク・ライフ・バランスを考慮し月の労働時間を150時間として時間給を計算すれば、男性で1633円、女性で1614円となります。

この結果は、これまでに調査を行った都道府県の結果と大きな差はなく、最低賃金は全国一律で1500円以上必要という私たちの要求の正当性が明らかになりました。引き続き、子育て世代の普通に暮らすための生計費を明らかにしていきます。

 大阪春闘共闘と大阪労連は、今春闘で調査結果を基に賃金の生計費原則を高く掲げたたかっていきます。そして、最低賃金1500円の実現に向け、政府や自治体に、中小企業支援とあわせて求めて職場や地域から運動を広げていきます。

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