民主法律時報

偽装請負との闘い ―2021年12月4日労働法研究会報告

弁護士 西 田 陽 子

1 はじめに

2021年12月4日、偽装請負をテーマに、派遣法 条の6による直接雇用申込みみなし制度をめぐる2つの裁判例を題材として労働法研究会が開かれました。
研究会は、各弁護団の報告後、それぞれ討議の時間を長めに取る方法で、会場(民法協事務所)とZoomの併用で行われ、研究者、組合員、弁護士等を含む、約30名が参加しました。

2 東リ事件(2021年11月4日。報告:村田浩治弁護士、安原邦博弁護士)

東リ事件は、東リ伊丹工場の労働者が、東リに対し、直接雇用関係にあることの確認を求めた事案であり、労働者側が逆転勝訴しました。派遣法40条の6を初めて適用して、直接雇用を認めた判決として大きな意義があります。
大阪高裁は、「日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、労働者派遣の役務の提供を受けている法人の代表者または・・・契約締結権限を有する者は、偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認するのが相当である」と判示しました。
萬井会長からは、更なる改善点として、経営者ではなく、企業の脱法目的を強調すべきという趣旨の発言がありました。村田弁護士が、前記引用部分の「組織的」という文言がそのことを表しているのではないかと述べたところ、青木克也弁護士から、「『日常的』『継続的』であれば『組織的』だと推認される関係にあるのではないか」との指摘がありました。また、若手研究者の参加者からも質問があり、日検事件弁護団の一員でもある冨田真平弁護士が厚労省の通達の紹介をする場面もありました。

3 日検事件(2021年10月12日。報告:増田尚弁護士)

日検事件は、使用者が、偽装請負を労働者派遣契約に切り替える措置を取ったことを労働者に開示せず、後に開示した時点では、派遣法 40条の6第2項により1年の承諾期間が経過してしまっていた事案です。承諾期間経過前において、労働組合から直接雇用の要求をしていたことから、①当該要求が承諾に当たるか、②派遣労働者が認識しなくても1年の承諾期間は進行するのか等が争点となりました。
名古屋高裁は、偽装請負を認めたものの、①につき、労働組合による直接雇用の要求については、みなし申込みに対する承諾の意思表示とみることは困難である、②につき、派遣労働者の認識とは無関係に承諾期間が進行するなどと判示しました。
最高裁の闘い方として、村田弁護士から派遣法32条や40条の6第2項の解釈の問題を押し出して行くべきという趣旨の発言があり、脇田滋龍谷大学名誉教授から、諸外国での派遣労働に関する判決や立法例も含めた大きな議論が必要であるとの指摘もありました。

4 終わりに

従来、研究者の方に基調講演をお願いする形で開催されることが多かった労働法研究会ですが、今回は、従前から要望の多かった研究者と組合員と弁護士が討論するスタイルでの開催となりました。とても充実した内容となり、非常に実り多い研究会だったと思います。
権利討論集会のプレ企画として、改めて両弁護団からの報告があります(2022年2月9日午後6時30分~)。ご興味がおありの方は、ご出席ください。
次回の労働法研究会は4月頃を予定しております。テーマは未定ですが、みなさま1人1人の貴重なご意見が、労働運動を理論面から支える礎となりますので、是非ご参加いただければ幸いです。

 

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