民主法律時報

労働法研究会「再考 争議行為・組合活動の正当性」のご報告

弁護士 青 木 克 也

2023年11月18日午後、「再考 争議行為・組合活動の正当性」をテーマとして労働法研究会を開催しました。対面会場とZoomミーティングを併用し、合計で約25名の方にご参加をいただきました。

研究会ではまず、名古屋経済大学教授の榊原嘉明先生から、「ドイツとの比較における日本の団体行動権保障の課題について」と題する基調講演をいただきました。

日本では、団体交渉権を中心に労働基本権を把握する見解が強く、裁判実務においても、そのような基本的発想に基づき、正当な団体行動の範囲が狭く画されている実態があります。また、「争議行為」と「組合活動」を峻別し、労務不提供などと狭く解される「争議行為」に当たらなければ、「組合活動」として相手方の権利・利益を害しない範囲でしか正当性が認められないという問題もあります。

これに対し、ドイツでは、最高裁判所の判決で、「誰に対して」「どのような方法で」争議行為を行うかについて、基本的に労働組合が自由に選択できると認められており、労働契約の当事者ではない会社に対する争議行為や、労務不提供を超えた積極的な業務阻害行為まで適法とされた例があります。彼我の労使関係には様々な差異がありますが、ドイツにおける団体行動権保障の論理には、日本でも説得力を持ちうる内容が含まれているように思われました。

基調講演の後は2件の事例報告があり、まずは名古屋第一法律事務所の福井悦子弁護士から、JMITU愛知支部ほか(オハラ樹脂工業・仮処分)事件について報告をいただきました。同事件では、組合ウェブサイトに写真・画像入りで掲載した会社批判の記事について、会社側が削除命令の仮処分を申し立てましたが、裁判所は、現代社会におけるインターネットを使用した組合活動の必要性に言及し、当該記事掲載の正当性を認めました。

次に、民法協会長の豊川義明弁護士から、民法協会員を中心とする弁護団が担当した関西外国語大学事件についての報告がありました。同事件では、組合員である教員が、大学から追加担当を指示された授業等の実施を拒否する指名ストライキを行ったことが、団体交渉での要求事項の自力救済を目的とし、組合が大学の人事権を行使するものであって違法な争議行為であるとの判断が地裁・高裁で示され、最高裁も上告不受理としました。

関西外国語大学事件の各判決は、団体行動権の保障を骨抜きにするような悪例と言わざるを得ません。このような日本司法の現状を打破していくためにも、研究者との議論や協働を通して、さらに強固な理論を打ち立てていく必要があります。今後も民法協ではこのような研究会を開催していきますので、ぜひ積極的にご参加ください。

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