民主法律時報

これでええんか! 雇用と貧困―働き方ASU―NET第23回つどいの報告

弁護士 稗田 隆史

 12月9日(水)、NPO法人働き方ASU―NETが主催する第23 回つどいがエル・おおさかにて開催され、私も参加してまいりました。
このつどいは、「雇用と貧困」をテーマとして取り上げており、今年、『雇用身分社会』(岩波新書)を著した森岡孝二さん(NPO法人働き方ASU―NET代表理事)と、『下流老人』(朝日新書)を著した藤田孝典さん(NPO法人ほっとプラス代表理事)のお二方のご講演と対談形式により行われました。会場には、140人を超える人たちが詰めかけており、大変な盛況でした。

森岡孝二さんのご講演では、「男は残業、女はパート」という考え方こそが今日の日本における労働状況の諸悪の根源であり、①この27年間で非正規雇用者が17 %から40%に増加しており、若者の世代ではそれが5割に達していること、②正規雇用者であっても賃金が下がり続けており、労働者の半数が年収300万円以下、年収200万円以下の労働者が日本には1800万人(うち1500万人が非正規労働者)にも達していること、③現代のブラック企業の働かせ方は、戦前の暗黒工場の働かせ方を想起させるものであって戦前回帰が始まっていることなど、日本の労働状況の問題点を指摘されました。その上で、雇用身分社会から抜け出す方法として、①労働者派遣制度の抜本的な見直し、②非正規労働者の比率の引き下げ、③雇用・労働の規制緩和との決別、④最低賃金の引き上げ、⑤8時間労働制の確立、⑥性別賃金格差の解消、の6点を実現する必要があることを紹介されました。

次に、藤田孝典さんのご講演では、「皆さん、まずは今日、絶望してください。未来のない話をします。」と衝撃的な言葉で始まり、社会福祉・社会保障という観点から、雇用問題について言及されました。日本の国民の貧困率(相対的貧困率)は、16.1%(6人に1人)であり、高齢者では、22%(4~5人に1人)に達しており、下流老人(藤田さんの造語であり、生活保護基準相当で暮らす高齢者及びそのおそれがある高齢者を指します。)に該当する高齢者は、700万人もいると推計され、今後も増える傾向にあることを指摘されました。その上で、このような下流化を防ぐ方法として、①生活保護制度の正しい理解、②社会保障・福祉制度の活用、③プライドを捨てること、④可能な限り貯蓄すること、⑤地域社会への積極的参加、⑥「受援力」を身に付けることを紹介されました。

海外では貧困を防止する政策が推進されていますが、日本では政策的に貧困が広がっていく制度になってしまっています。若者の雇用が不安定になることにより、年金制度が崩壊し、高齢者の社会保障・福祉制度の活用の機会が減ってしまうのです。今回のつどいに参加することにより、労働者の雇用劣化の問題は、日本における社会保障の問題と表裏一体の関係にあることが理解できました。このような深刻な事態にあることを社会全体で共有化し、正しい理解のもと、制度そのものを改善すべく、今後も社会的活動に取り組んでいく必要性があることを再認識することができました。

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