民主法律時報

ネクストレベル未払賃金請求事件 提訴のご報告

弁護士 佐久間 ひろみ

1.事案の概要

大学生である原告は、会社の関連会社ネクストレベルホールディングス株式会社が運営するスキマバイトアプリ「ネクストレベル」の利用者登録をして、学業の合間に何度か利用してきました。そのような中、原告は、2025年9月17日午後8時頃、アプリにおいて株式会社ネクストレベル(以下、「会社」といいます。)が募集していた案件(仕事名:【日当保証】オンラインのみ・あなたのお悩みの相談に乗ります、作業日:2025年9月18日、作業時間:13時~14時30分、仕事内容:商品の購入代行の手順を説明・個別オンライン説明会への参加、給与:3333円/時)に申し込みをしました。

しかし、仕事開始時刻である翌18日13時を過ぎても、会社から何の連絡もありませんでした。そこで、原告がアプリのチャット機能を用いて問い合わせたところ、仕事開始時刻から14分が経過した13時14分になって初めて、会社から「条件に合わなかったため不採用とした」旨のメールが届きました。

原告は、仕事開始時間にパソコン前で待機していたにもかかわらず、一切賃金が支払われないことに納得がいかず、会社に対し支払いを求めましたが、会社は労働契約が成立していないことを理由として賃金支払いを拒否しています。

2.派遣研究会への相談と会社との示談交渉

原告は、上記経緯について大学の教員に相談をしたところ、派遣研究会に相談してみた方がよいとのアドバイスを受けたことから、研究会に相談するに至りました。派遣研究会としては、かねてより取り組んでいるスポットワーク問題(突然の会社側からのキャンセルにより賃金が支払われないなど)ということで、弁護団を組んで取り組むこととしました。

そこで弁護団は、会社に対し通知書を送り、労働契約に基づく未払賃金5,000円と遅延損害金(年14.6%)の支払を求めましたが、会社の担当者は、事実の調査中であると述べるだけで何ら対応をせず、原告代理人からの電話にも出ないという不誠実な態度を続けました。

3.大阪簡易裁判所への提訴と本件の争点

会社が何ら対処しないことから、弁護団は、2026年4月16日、大阪簡易裁判所に対し、未払賃金及び遅延損害金を求めて提訴いたしました。

本件の争点は、労働契約の成立時期にあります。厚生労働省は2025年7月4日、一般社団法人スポットワーク協会に対し、適切な労務管理に関する協力依頼を行いました。これを受けて同協会(会社関連会社も準会員として所属)は、「スポットワークサービスにおける適切な労務管理へ向けた考え方」を取りまとめ、公表しています。この指針において、「2025年9月1日以降、働き手が求人への応募を完了した時点で、解約権が留保された労働契約(解約権留保付労働契約)が成立する」という考え方が、業界の統一的な解釈として明示されました。この点、原告は9月17日に応募を完了させており、会社との間に労働契約が成立していたことは明白です。開始時刻を過ぎてからの不採用通知は契約上の義務を免れる正当な理由にはならず、会社は本件労働契約に基づき、賃金を支払う義務を負います。

また、原告は、未払賃金に加え、不当な契約解消をもって退職とみなされることから、年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払いも求めています。

4.まとめ

スポットワークには、労働者側が気楽に利用できるという側面がありつつ、企業側の都合で労働者をいつでもコストなく切り捨てるといった危険性もあります。ある試算によれば、スポットワーク業界全体でのキャンセルによる未払い賃金は、過去3年間で300億円に上るとも言われています。弁護団としては、裁判を通じてスポットワークの問題点を明らかにし、労働者の権利が守られるよう引き続き全力を尽くしてまいります。

(弁護団は、村田浩治、松村隆志各弁護士と、佐久間)

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