ヤマト運輸残業代請求・提訴報告

2019年07月15日

弁護士 清水 亮宏

1 ヤマト運輸残業代請求

2019年5月21日、「クロネコヤマトの宅急便」の宅配ドライバーとして働く原告が、ヤマト運輸株式会社を相手に、未払い残業代約260万円等の支払いを求めて提訴しました。

2 サービス残業問題

原告は、1996年頃にヤマト運輸に入社し、豊中や尼崎の支店等で働いてきた宅配ドライバーです。

ヤマト運輸が配達する荷物は、配送拠点に届けられた後、宅配ドライバーの配達エリアごとに仕分けをした上で、車両に積み込まれます。原告が在籍していた尼崎の支店では、早朝の仕分け作業をするアルバイトが不足していたため、宅配ドライバー自身が始業時間よりも前に出勤して仕分け業務を行わなければなりませんでした。尼崎の支店の支店長は、宅配ドライバーらが早朝から仕分け作業をしていることを知りながら、所定始業時間頃に打刻をするよう指示していました。

また、宅配ドライバーは業務用の携帯電話を常に持ち歩いています。不在連絡票を見た顧客から再配達を依頼する電話がいつかかってくるのか分からない状態でした。加えて、業務自体が過密であったこともあり、昼休みをほとんど取ることができない状態でした。

ところが、ヤマト運輸では、上記の早出残業や未取得休憩時間に対する残業代を支払っていませんでした。

3 違法な変形労働時間制

ヤマト運輸は、1か月単位の変形労働時間制を導入していました。しかし、その運用実態は、労基法所定の要件を満たしておらず、無効だと言わざるを得ません。

原告が勤務していた支店では、2種類の勤務シフトがありました。1つはダミーであり、もう1つが実際の勤務シフトです。つまり、ヤマト運輸は、実際の勤務シフトは、変形労働時間制の要件を満たしていないことを自覚していたからこそ、ダミーの勤務シフトをわざわざ作成していたものと考えられます。

次に、変形労働時間制は、「一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない」場合には、特定の週や日について法定労働時間を超えて労働させても、時間外労働とは取り扱わないという制度です。ところが、ヤマト運輸が定めていた勤務シフトは、1か月の法定労働時間(31日の月であれば177.1時間、30日の月であれば171.4時間)を大幅に超過しており、多い月では220時間以上、少ない月でも180時間以上の勤務シフトが定められていました。

さらに、ヤマト運輸では、毎月16日から翌月15日までの勤務シフトを策定していましたが、一旦定められた勤務シフトが、その後に何度も変更されていました。変形労働時間制では、変形期間が開始されるまでに当該変形期間中の労働時間が特定されていなければならず、一旦特定された労働時間がその後使用者の恣意によってみだりに変更されることは許されません。

4 提訴前の団体交渉

原告は、ブラック企業ユニオン(総合サポートユニオン)に加入して、ヤマト運輸と団体交渉を重ねてきました。しかし、ヤマト運輸側は、変形労働時間性が有効であるとの主張を譲らなかったため、訴訟提起に踏み切ることになりました。

裁判の中で変形労働時間制が孕む問題点を明らかにし、社会に警鐘を鳴らすことができればと考えています。

(代理人は、中西基弁護士と清水です。)