全港湾阪神支部・日検事件 ~派遣先の使用者性を否定する不当命令

2019年04月15日

弁護士 西川 大史

1 はじめに

全港湾阪神支部は、一般社団法人日本貨物検数協会(日検)による団体交渉拒否について不当労働行為救済申立を行いましたが、府労委は、2019年2月12日、組合の申立を棄却しました。

2 事実の経過

日検は、港湾物流において検数等の事業を営む社団法人です。検数業務は、その専門性ゆえに、日検などの4協会と、4協会に指定された事業体の労働者でなければ行うことができません。

日検の指定事業体の一つである日興サービス株式会社の従業員は、日検名古屋支部の職員からの直接の指揮命令の下、検数業務を行ってきました。日興サービスの従業員の就労実態は、派遣労働でした。なお、府労委の調査・求釈明で、日検と日興サービスでは業務委託契約を締結していたことが明らかとなりました。日検は偽装請負の事実を隠してきたのです。

組合は、労働条件の改善や長時間労働の是正を求めるなど積極的な組合活動を続けてきたのですが、日検・日興サービスは組合を嫌悪し、残業差別、配転などの不当労働行為を繰り返しました。そのため、組合は、2016年3月に、愛知県労働委員会に救済申立をしたところ、日検から和解による解決の申出があり、2016年3月23日、「指定事業体からの職員採用に関しては、平成28年度から平成30年度まで、毎年度約120名の採用を実施するよう努力する」との確認書を取り交わすことになり、救済申立てを取り下げました。

組合は、確認書に基づき、日興サービスの従業員である組合員について、日検で直接雇用するよう団体交渉を申し入れました。しかし、日検は、団体交渉に応じるべき立場にはないとして、組合との確認を反故にして、団体交渉を拒否したのでした。

組合は、日検の団交拒否が不当労働行為であるとして、府労委に救済申立をしました。争点は、派遣先である日検が労働組合法7条の「使用者」に該当するかであり、①確認書の存在と、②偽装請負の申込みなしによって、近い将来に雇用契約が成立する可能性が現実的かつ具体的に存するといえるかです。

3 確認書について

府労委は、確認書は組合員を無条件で転籍させることまで認めたものではなく、職員採用について努力することが確認されているにすぎないとして使用者性を否定しました。

府労委の判断はあまりにも形式的であり、受け入れることはできません。組合と日検では、指定事業体からの職員採用に関して文書まで確認しています。しかも、この確認書は、日検からの申出により作成されたのです。にもかかわらず、団体交渉に応じる必要がないというのであれば、確認書の意味がなく、派遣労働者の救済が図られません。

4 偽装請負の申込みなしについて

府労委は、偽装請負であったとしても、組合からの団交申入は派遣法40条の6が定める申込みなしに対する組合員の承諾にはあたらないと判断しました。なお、日検は、派遣契約に切り替えるにあたって、労働者の同意を得ておらず、労働局から指導されていたのですが、それは手続の不備についての是正を求められたに過ぎないと判断しています。

偽装請負の申込みなしに対する承諾についての判断も、改正派遣法の趣旨に沿わないものです。しかも、日検は府労委からの求釈明にも応じることを拒んで偽装請負を隠そうとしていたのですが、これを府労委が何ら問題視していないところにも怒りが込み上げてきます。

5 中労委での逆転勝利を!

組合は、中労委に再審査申立をしました。府労委命令のような判断がまかり通るのであれば、派遣労働者の救済を図ることができません。改正労働者派遣法も骨抜きにされてしまい、申込みなし制度も絵に描いた餅になってしまいます。
必ず中労委で逆転できるよう、一層の奮闘を誓います。

(弁護団は、坂田宗彦、増田尚、冨田真平各弁護士と西川)