民主法律時報

日本労働弁護団第62回全国総会報告

弁護士 西田 陽子

1 総会の概要
2018年11月16日(金)及び17日(土)、北海道のシャトレーゼガトーキングダムサッポロにおいて、日本労働弁護団の第 回全国総会が開催されました。

2 第1日――幹事長報告、道幸哲也北大名誉教授による記念講演、懇親会ほか
総会1日目(16日)は、会長である徳住堅治弁護士による「この2日間十分な議論をし、成果を持ち帰って活動してほしい」という力強い開会挨拶に始まりました。来賓である八木宏樹札幌弁護士会会長、出村良平日本労働組合総連合会北海道連合会会長、三上友衛北海道労働組合総連合議長からの挨拶の後、棗一郎幹事長より、働き方改革関連法、入管法改正、職場のハラスメント防止法等に関する活動方針の報告がありました。

記念講演は、道幸哲也北海道大学名誉教授より、「労働関係の集団的性質と労働組合法の課題」というテーマでご講演いただきました。アメリカ法上の制度を参考に、不当労働行為制度の保護対象を労働組合や労働組合員に限定せず、非組合員の集団志向的行為や従業員代表の行為等をも保護対象に含む構想につき、非常に示唆に富む内容でした。講演後は、中島哲弁護士及び上田絵里弁護士をコーディネーターとして、道幸先生、長野順一弁護士及び札幌地域労組副委員長の鈴木一さんをパネラーとして、パネルディスカッションが行われました。パネルディスカッション後の質疑応答において、鎌田幸夫弁護士からは、従業員代表制の導入により労働組合の存在意義はどうなるのかという質疑がなされました。

その後は、前回総会以降の取組みについて、種々の報告がなされました(①嶋崎量弁護士(常任幹事)から働き方改革関連法について、②今泉義竜弁護士(事務局次長)から時間外労働の上限規制について、③梅田和尊弁護士(事務局次長)から同一労働同一賃金について、④北海学園大学の川村雅則先生から、公契約条例、非正規公務員の問題、無期転換ルール、学生アルバイト問題について、⑤新村響子弁護士(事務局次長)から、ハラスメント防止法について)。討議においては、無期転換後の労働者と正社員の労働条件の格差をいかにして埋めるかにつき、中島光孝弁護士より問題提起がなされ、活発な議論が行われました。
全国常任幹事会後は、懇親会が開催され、会員同士(会員の家族も)が親睦を深めました。

3 第2日――特別報告、ハマキョウレックス弁護団への労働弁護団賞授与ほか
総会2日目(17日)は、特別報告から始まりました。①棗幹事長から憲法改正問題について、②佐藤博史弁護士から自衛隊員の人権等について、③山岡遥平弁護士(事務局員)から自民党の改憲案の問題点等について、④指宿昭一弁護士(常任幹事)から外国人労働者問題について、⑤木下徹郎弁護士(事務局次長)から雇用によらない働き方について、⑥谷村明子弁護士(事務局次長)から女性労働者の問題について、⑦嶋崎量常任幹事から労契法 条について、⑦村田浩治弁護士(常任幹事)からは、非正規労働者の権利実現全国会議における派遣ネット相談等につきご報告がありました。

今年の労働弁護団賞は、ハマキョウレックス事件最高裁判決(2018年6月1日)でした。徳住会長より、中島光孝弁護士に賞状が授与されました。中島弁護士は、記念スピーチにおいて、「最高裁判決には労使交渉をせよ、というメッセージがある。使用者側は本判決を受けて対策を立てているが、労働組合の取組みはまだ弱い。格差是正に取り組まなければならない」と述べました。

また、今年は、労働時間の上限規制等を活用し長時間労働の是正を目指す決議、高度プロフェッショナル制度の廃止と職場への導入阻止を目指す決議等合計8本の決議がなされました(その他の決議については、日本労働弁護団HPをご参照ください)。
井上幸夫弁護士(副会長)からの閉会挨拶の後、3つのスタディグループ(①LGBTと労働問題、②労働運動のSNS実践講座、③非正規就労(雇用によらない働き方)に分かれて討論が行われました。筆者は、当会の村田弁護士とともに、②のSNS実践講座に参加しました。SNSを弁護士や労働組合がどう使っていくかにつき、今泉弁護士、中村優介弁護士(事務局次長)からの取組み紹介、長崎バスユニオン(中川拓弁護士。当日、諸事情で来場できなかったが、スカイプ参加により簡単な報告あり)、さっぽろ青年ユニオン等各地の実践例の紹介がありました。なお、このSNSのスタディグループ参加を受けて、前記の派遣ネット相談の公式キャラクターである「はろなちゃん」のツイッターアカウント(@harona_hiseiki)が誕生しました。

4 おわりに・雑感
筆者は始めての参加で、知り合いも大変少なく、体調が悪くなるくらい緊張したのですが、全国で活躍する研究者、組合員、弁護士の方々の活発な議論に触れることができ、参加して本当によかったと思いました。「成果」と言えるかは分かりませんが、念願であった「はろなちゃん」を誕生させることができ、ブラック企業対策!判例ゼミにロイズのチョコレートを買ってくることができました。

次回大会は岡山だそうです。まだ参加したことのない方も、次は大阪から近いので、是非ご参加を!筆者も、また大阪に「成果」(活動のアイディアとおいしいお土産?)を持ち帰るために、きっと参加します。

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