民主法律時報

過労死防止大阪センターシンポ 報告

過労死防止大阪センター 幹事 北出 茂

2017年4月14日(金)、エル・おおさかで、シンポジウム「過労死を生まない!真の働き方改革を目指して!」(大阪労働局:後援)と、過労死防止大阪センターの総会が開催されました。

シンポジウムでは、冒頭で、大阪労働局が「労働時間の適正把握の使用者が講ずべきガイドライン」と題する講演を行いました。
労働基準法において「使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している」ことに触れながら、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」が求められることや、 「労働時間等設定改善委員会等の活用」についてお話をされました。

松丸正さん(過労死防止大阪センター代表幹事)は、「過労死を生まないために徹底した労働時間把握を!」と題する講演を行いました。
「労働時間の適正な把握なしには労働時間の規制は死滅する」として、ビルの新築工事中(約1年)月100時間を超える時間外労働があった事例(大手電機工事会社の現場監督をしていた30歳の労働者の過労自殺の事案)では、自己申告では28時間の時間外労働であったが、実態(警備記録等)では176時間であったなどの具体例を挙げてお話されました。

また、「この世から過労死する人をなくしてほしい」と訴える高橋美幸さん(電通に入社後に過労死された高橋まつりさんのお母さん)からの思いが込められたビデオメッセージが届けられ、放映されました。

寺西笑子さん(過労死を考える家族の会代表)は、今国会「働き方改革」の大きな焦点となっている「長時間労働規制の国会情勢」について、残業時間の上限が過労死ライン(80時間~100時間)となっていて、過労死ライン合法化を危惧していると、怒りを示しました。

まとめとして、過労死をなくすためには、労働時間の上限規制、勤務間インターバル規制、有給休暇の取得推進が必要ですが、その前提となる使用者による労働時間の把握が必要です。

しかしながら、現状、労働時間の把握に係る自己申告制の不適切な運用等に伴い、同法に違反する過重な長時間労働や割増賃金の未払いといった問題が生じているなど、使用者が労働時間を適切に管理していない状況がみられるところです。労働時間の適正把握の懈怠は大きな問題です。

また、過労死ライン以下の労働時間の場合にこそ、過労死の認定をめぐる裁判が行われている現状からしても、過労死ライン(80時間~100時間)を残業時間の上限として合法化するような制度は大問題といえます。長時間労働を助長する「残業代ゼロ」法案をセットに押し通そうとする政府案は、過労死防止法に逆行しています。特別条項を撤廃し、 協定は大臣告示「月45時間、年360時間」以内におさめるべきであると考えます。
私事ですが、労働運動に携わるようになって以来、ここ数年の私の2大テーマは「ブラック企業問題」と「過労死問題」でした。
いまもなお、この日本で蔓延している長時間労働によって数多くの労働者の命と健康が奪われています。
究極の労働問題ともいえる「過労死問題」について、自分たちがなぜ過労死防止法の立法制定運動に立ち上がったか、52万筆の署名の重み、さらには、過労死防止大阪センターの設立の理念を今一度、確認する機会となりました。

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