決議・声明・意見書

声明

正規雇用と非正規雇用の格差是正のため 実効性ある改革を求める声明

安倍内閣は、2016年12月20日、「同一労働同一賃金」のガイドライン(指針)案を公表した。それは、自民党政権の労働政策やアベノミクスの行き詰まりの現れであるともに、約4割に上る非正規雇用の増加と格差の拡大、電通事件をはじめ年間200件前後に及ぶ過労死・過労自殺の認定など労働者のおかれた深刻さが、政府としても、もはや「放置」できない状況となっていることを如実に示している。

ところが、ガイドライン案は、格差是正にとって最も重要である基本給について、職業経験や能力、業績・成果、勤続年数を基準とし、これに違いがあれば、格差は不合理でないとしている。

しかし、同一労働同一賃金の原則とは、本来、性別や年齢・雇用形態の違いにかかわらず、同じ仕事には同じ賃金を支払うべきだとするものであり、今回のガイドライン案では、同一労働同一賃金の原則が実現するものとは到底言えない。また、賃金格差の合理性についての使用者の説明責任は盛り込まないなど、その実効性に乏しいものとなっている。かえって、形式的に違った職務を割り当てる形でガイドライを形式的に守ろうとする「職務分離」が広がると、格差が固定化され、非正規雇用の待遇が悪化する危険性すらある。

また、貢献度に応じた賞与の支給、福祉厚生(通勤費、食堂利用)、出張手当、食事手当、精勤手当の均等待遇が求められるなど一部の前進面があるものの、長期雇用を前提とする退職金、家族手当、住宅手当については盛り込まれず、派遣法改悪で拡大された派遣労働については、派遣元の義務が抽象的に述べられているにとどまり、具体的な施策の記述は全くない。

今回のガイドライン案は、財界が、副業・兼業の拡大、テレワーク促進、裁量労働など「多様な働き方」の導入を求めており、同一労働同一賃金には消極的であることに配慮したものと言わざるを得ない。それでは、正規雇用と非正規雇用の格差是正にとって極めて不十分で実効性のないものに終わりかねない。

そもそも、本気で正規雇用と非正規雇用の格差是正をするというのであれば、非正規雇用の入り口規制をし、その数を減少させることが先決である。

当協会は、安倍内閣に対して、非正規雇用の入り口規制を行うとともに、法制化を考えるのであれば、「同じ仕事には同一の賃金を支払う」という本来の同一労働同一賃金原則を明記し、格差があればその合理性の証明責任を使用者に負担させる等、実効性あるものにすることを強く求めるものである。

2017年2月1日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令

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