決議・声明・意見書

声明

大阪府の最低賃金大幅引き上げ、時間額1500円の早期実現と全国一律最低賃金制度を求める意見書

大阪地方最低賃金審議会 会長 殿

2025年7月28日
大阪市北区南森町1-2-25 南森町isビル7階
民主法律協会
会長 豊川義明


大阪府の最低賃金大幅引き上げ、時間額1,500円の早期実現と全国一律最低賃金制度を求める意見書

民主法律協会は、平和憲法を擁護し、労働者と勤労者の権利擁護と民主主義の前進を目的として結成された市民団体です。大阪を中心に、法律家(弁護士や学者)と労働者・労働組合、市民団体が手を携えながら活動するという特長を生かし、労働者と市民の権利を擁護するために活動に取り組んでいます。

物価高が継続し、労働者の生活に深刻な影響を及ぼしています。毎月勤労統計調査(速報値)によれば、2025年5月の働く人1人当たりの「名目賃金」は、前の年の同じ月と比べて1.0%増え30万141円で、41カ月連続でプラスとなっています。しかし、その一方で物価の変動を反映した「実質賃金」は前の年の同じ月に比べて2.9%減となり、5カ月連続のマイナスと報じられています。米などの食料品が高騰し国民生活を直撃する中、更なる賃金の引き上げが待ったなしの状況です。

大阪府の最低賃金は、2024年10月に前年度より50円引き上げられ時給1,114円とされました。全国加重平均額も、前年度から50円加算されて1,055円となり、最低賃金が大幅に引き上げられたと報じられました。しかし物価高騰が続く今日、時給1,114円の賃金収入では憲法第25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営むのに足りる額とは到底言えません。日本で普通に働いて安定した生活を営むためには、時給2,000円程度の賃金が保障されることが望ましく、時給1,500円以上の最低賃金を保障することは、労働者のくらしのため必要最低限の条件であり早期に実現されなければなりません。石破内閣は、最低賃金1,500円を2020年代に達成するという目標を掲げ、都道府県への支援措置を行う方針を明らかにしています。政府の目標を達成するためには、2030年まで毎年、約73円の最低賃金引き上げを継続していく必要があり、かかる政府目標を踏まえれば、今年も昨年以上の大幅引き上げが必要です。

さらに、地域別最低賃金制度は賃金の地域間格差を作り出し、賃金引き上げを抑制する働きをしています。現在、生活にかかる費用に地域間で大きな差異はなく、収入の地域間格差を広げる地域別最賃制度は、労働者を地方から流出させる一因になっていると言えます。他国をみても全国一律の最低賃金制度が主流となっており、最賃制度は全国一律に是正される必要があります。その上で、地域独自の取り組みによる、より高い賃金の設定を目指していくべきです。

また、中小企業で働く労働者の賃金を引き上げるためには、中小企業の安定した経営基盤を確保する必要があります。中小企業は物価高騰の影響を大きく受けていますが、大企業のように価格転嫁して収益を維持することが現実として困難な企業も多く、政府による強力な支援や、取引先大企業との公正取引を確立するための法整備が必要です。

当協会は、労働者の権利を擁護する団体として、労働者の長時間労働の問題、非正規労働者や女性労働者の賃金差別問題に取り組んできました。労働の現場では、過酷な長時間労働による過労死や過労自殺、ハラスメントといった深刻な問題が多発しています。その上、長時間働いても実質賃金が低下したまま上がらない状況が続けば、多くの労働者は希望を持って働き続けることができなくなってしまいます。労働者に対して、生活に必要な収入を保障する政策を取らないまま放置することは許されないと言うべきです。

全ての労働者が安心して暮らせるようにするために、賃金の底上げは早急に実行されなければなりません。そのために、中小企業支援策の拡充とともに、大阪府の最低賃金を大幅に引き上げ、時給1,500円に到達させることを強く求めます。

1、物価上昇を上回る賃上げを実現し、すべての労働者が人たるに値する生活ができるようにするために、大阪府の最低賃金を大幅に引きあげ、生計費原則に基づき早期に1,500円に到達させること。

2、全国・全産業一律最低賃金制を確立すること。

3、最低賃金の大幅引き上げと同時に公契約法の制定、中小企業関連予算の増額、中小企業支援策の強化、公正取引確立のための下請け法等の改正の実行を政府に求めること。

以上

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