2025年7月20日に投開票を控えた第27回参議院選挙では、外国人によって日本人の権益が奪われているという分かりやすい論理に基づいて、排外主義を強く主張する候補者が複数現れ、外国人を排すべきとの主張が国民に提示されている。かかる動きによって、自民党は、「違法外国人ゼロ」を掲げ、日本維新の会も「外国人の無秩序な増加や地域摩擦の弊害」「外国人による違法行為の増加に対応し、入管庁・地方局の体制強化や警察・自治体との連携で迅速な対処を図」るべきであるなど、外国人を排斥する政策を主張するに至っている。参政党は、「日本人ファースト」を掲げ、国益を重視するとの外国人政策を主張しており、これらの政党が外国人をいかに規制するかを競い合う状況が生み出されている。これらの主張は、外国人を違法行為などと結びつけ、ひとくくりに日本社会から排除すべきものと国民に印象づけるものであり、法の下の平等を定めた憲法14条の理念とは相容れない発想というべきである。選挙運動中、各政党が政策を訴える中で、外国人労働者によって日本人の賃金が上がらない、日本の治安が外国人によって悪化しているなどといった虚偽の内容を含む演説が堂々と行われている現状があるが、これらの言説は外国人に対する差別を肯定し、外国人を排斥する主張、ヘイトスピーチにほかならない。
日本社会では、2000年頃から、人種や民族、国籍などの属性に基づいて、差別や憎悪を煽るヘイトスピーチが顕在化してきた。朝鮮半島出身者である在日コリアンらに対する排外主義の街頭演説やデモが、集住地区で行われたことは記憶に新しい。その後、2016年にはヘイトスピーチ解消法が制定されたが、それでもなお、日本社会においてヘイトスピーチはやむことはなく、インターネット上でも、外国籍者や外国にルーツを持つ人々へのヘイトスピーチは止んでいない。
本来、政治は、このような人種差別や民族差別を是正し、多文化共生社会の実現のために尽力すべきであるにもかかわらず、選挙運動においてヘイトスピーチを行い、露骨な排外主義政策を主張し扇動することは到底許されるものではない。政治家のヘイトスピーチについては、2014年の国連人種差別撤廃委員会においても懸念が示され、日本政府に対して「ヘイトスピーチを広めたり、憎悪を扇動した公人や政治家に対して適切な制裁措置をとることを追求すること」を勧告されているところであり、これは選挙運動においても何ら異なるものではない。
民主法律協会は、外国人労働者の権利を擁護する活動に取り組む団体として、選挙運動においてヘイトスピーチが繰り返され、日本社会から外国人を排斥しようとする排外主義が拡大している現状に強く抗議するとともに、国政選挙においては、国籍にかかわらず全ての人が日本社会で平穏に生活できる共生社会を実現できる政治が前進するべきであることを強く訴える。
2025年7月16日
民主法律協会
会長 豊川 義明