民主法律時報

第1回労働相談懇談会:コロナ関連学習会 「労働条件の不利益変更問題について」

おおさか労働相談センター相談員 舛田 佳代子

2021年3月23日(火)、国労会館で2021年度の第1回労働相談懇談会を開催しました。コロナ禍で正規から非正規への転換など「労働条件の不利益変更問題」について北大阪総合法律事務所の中西基弁護士を講師に学習しました。参加は5産別・7地域の組合員と弁護士など32名でした。

最初に、大阪法律事務所の加苅匠弁護士から昨年8月以降の裁判・労働委員会における情勢報告がありました。旧労働契約法20条に関する5つの最高裁判決について、民法協声明を基に解説。新設されたパート有期法が中小企業に適用される2021年度が大きな局面になると指摘、格差の大きな要因である基本給や賞与・退職金についてもあきらめずに闘おうと呼びかけられました。また労働問題の新しい課題として、ウーバーなどの「ギグワーカー」に対して英最高裁が「従業員」と認定したことや、国内の「ウーバーイーツユニオン」「ヤマハ音楽講師ユニオン」の結成と活動の紹介がありました。

学習会では中西基弁護士から、労働契約も民法522条1項で定める「契約」であることが大前提にあり、労働契約は使用者と労働者の間で合意が成立して初めて成り立つものであること。契約は口頭だけでも黙示の承諾でも成立すること。実際に労働契約書がない労働者が多くいるが、労基法や労契法・パート有期法では文書で明示するよう定められていることなどの指摘がありました。また、内容が合理的な就業規則は労働契約の内容となること、就業規則よりも低い待遇の労働契約は無効となる、上回る場合は有効となることについての説明がありました。

労働条件の変更では、労働者の合意なしに一方的に変更できないのが原則とした上で、山梨県民信用組合の裁判を例に「自由な意思に基づいた同意かどうか」が問われるとの指摘がありました。

一方で、コロナ禍を理由にした労働時間や出勤日数を減らすという問題は、労働契約の不利益変更というよりは休業ととらえるべきで、政府の制度活用を求めることが大切だとの指摘がありました。

質疑応答では、参加各組織が抱える労働相談についての質問が寄せられ、中西弁護士から問題整理のための丁寧なアドバイスや、十分争う余地はあるとの力強いアドバイスが行われ、参加者からは勉強になったとの感想が寄せられ有意義な学習会となりました。

次回は、2021年6月17日(木)18時30分~、国労大阪会館3階大会議室にて「退職強要と退職勧奨」をテーマに開催します。

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