徳島給与口座違法差押えに対する 国賠訴訟を提訴

2020年10月15日

弁護士 西川 裕也

1 はじめに

徳島県市町村総合事務組合(以下、「被告」とします。)が、徳島市内に在住する男性(以下、「原告」とします。)の給与が振り込まれた預貯金口座を全額差し押さえたことを受け、令和2年5月 日付で徳島地方裁判所に上記の被告の違法な給与口座差押えに対する国家賠償請求(及び不当利得返還請求)訴訟を提起しましたので、その内容をご報告します。

2 事案の概要

原告は、給与所得者であり、賃貸物件で生活しています。月額 万円程度の給与を得て、何とか生活を維持している状況で、給与以外に財産はありませんでした。

上記の給料は、被告に差し押さえられた預貯金口座への振込みにより支払われていました。

被告は、差押処分を行う前提に、原告の財産調査を行い、上記の口座には給与が振り込まれていることを認識していたにもかかわらず、令和2年2月21日付で原告に給与が支払われた同日に、預貯金全額の差押えを強行しました。

原告は、生活の糧である給料を被告が差押えしてしまい、このままでは生きていけないため、自身でインターネットにて調査したうえで、給料を全額差し押さえることは違法であると判断した大津事件大阪高裁判決を報じた記事を見つけ、すぐに被告に対して、上記の高裁判決によれば今回の差押処分は違法な差押えであるから給料を返して欲しいと求めました。

それに対して、被告の職員は、原告の指摘する判決は高等裁判所のものだから関係ない、自分たちは最高裁の判断にのっとっているから問題ない、給与ではなく口座を差し押さえているに過ぎないと言って、全く、原告の話を聞き入れることはなく、原告に返金をしないまま、同年3月2日に取り立てた全額を滞納税金に充当しました。

3 訴訟に至る経緯

原告は、給与を全額差し押さえられてしまい、一日一食、僅かなパンをかじったり、氷を食べて、飢えをしのぎました。ただでさえ、日々生きていくだけでも大変な状況でしたが、上記の違法な差押えが横行することは問題であると考え、何とか違法な差押えを是正すべきだと考えました。

そこで、原告は、上記の違法な差押えを是正すべく、滞納処分問題に詳しい弁護士を自ら調査し、大阪の勝俣彰仁弁護士に直接に電話を掛け、本件を依頼するに至りました。

その後、同弁護士を通じて、徳島市内に事務所を持つ堀金博弁護士や違法な滞納処分の問題に取り組む弁護士の協力を得たうえで、本件訴訟を提訴することになりました。

4 終わりに

給料は生活に欠かせない資金であるため、法は全額の差押えを禁止しており(国税徴収法76条1項、国税徴収法施行令 条)、その法の趣旨から、差押禁止債権が預貯金口座に入金された場合でも差押禁止の趣旨は及ぶとする判決が続けて出されています(広島高裁松江支部平成25年11月 27日判決、前橋地裁平成30年1月31日判決、大阪高裁令和元年9月26日判決)。

上記のような給与が入金された預貯金口座を差し押さえるべきではないとする判決の内容は、被告も十分に理解しているはずです。

本件では、徳島地方裁判所においても、上記の判決の流れを汲み、違法な差押えを行った被告の責任をきちんと認めさせ、国や自治体により行われる、違法な滞納処分、行き過ぎた滞納処分に歯止めをかけるためにも、大きな意義を有すると考えておりますので、どうぞ、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

(弁護団は、勝俣彰仁、堀金博(徳島弁護士会所属)、尾﨑彰俊(京都弁護士会所属)、牧亮太、楠晋一、冨田真平及び当職)