エミレーツ航空事件―― 組合員を現実に就労させるよう命じた中労委――

2020年04月15日

弁護士 森  信雄

1 事案の概要

エミレーツ航空(以下「会社」という)の西日本支店・予約発券課(以下「本件課」という)は日本のコールセンター業務を担っていた。

2013年1月、パワハラや残業代未払問題を契機に、本件課所属の3名の労働者(以下「組合員」という。)が労働組合(以下「組合」という)を結成した。

会社は、合理化策の一環と称して、2013年5月に中国・広州コールセンターを開設し、本件課への電話が同センターに転送されるようになった。組合は、業務量減少に伴うリストラを危惧し、会社に問いただしたが、会社は、「雇用は保障され、配転もない」旨回答した。

2013年6月以降、パワハラや残業代未払問題を主な議題として団交が行われたが、2014年3月時点でも未解決であり、組合は引き続き会社の責任を追及していた。

2014年5月、会社は、突然、本件課を含む三部署の廃止を発表し、廃止対象部署所属の13名(組合員3名を含む)に早期希望退職を含む複数の選択肢を提案した。3つある新設ポジションの応募期間は2日、希望退職の応募期間は2週間であった。

組合は、団交開催まで会社提案の凍結を求めたが、会社は無視した。さらに組合は団交による解決を求めたが、会社は、同年6月、大阪コールセンター廃止を強行し、業務がなくなったとして、組合員に自宅待機を命じ、同年9月に解雇した。

組合は、本件自宅待機命令及び本件解雇が組合員に対する不利益取り扱い及び組合に対する支配介入であることを理由に、不当労働行為救済申立を行った。

2 会社を断罪した府労委命令

2016年10月11日、府労委は、整理解雇の四要件に相当する事実のいずれも認め難いこと、会社と組合が対立関係にあり本件自宅待機及び本件解雇に至る経緯において組合軽視の姿勢が窺われることを考慮すると、本件自宅待機及びそれに連続する本件解雇は不利益取扱いにあたり、支配介入にも当たるとして、①解雇がなかったものとしての取扱い及び賃金相当額の支払い、②謝罪文の手交を命じた。

3 中労委での審理

会社は不労委命令を不服として再審査申立をしたが、別途、本訴で解雇無効判決が確定したため、組合員に賃金の支払をするようになった。

会社は、不当労働行為性を争うとともに、賃金の支払をしていることを理由に、「申立の利益を失ったから却下すべきである」旨の主張をした。

中労委は和解による解決を勧め、組合は、組合員全員の速やかな職場復帰を求めたが、会社が誠意ある対応をしなかったため、和解は打ち切られ、2020年2月13日に命令が交付された。

4 地労委命令の内容を前進させた中労委命令

中労委命令は、詳細な事実認定を行った上で、本件自宅待機命令及び本件解雇は、組合員に対する不利益取り扱いであり、組合に対する支配介入に当たる旨判示した。

申立の利益については、賃金相当額の支払いについては精算が終了しているとしつつ、「必要に応じてポジションを新設し、または、それができない場合も必要な研修等を行う等により、組合員3名の職場復帰を検討すべきものである」として、府労委命令の「解雇がなかったものとして取り扱う」との部分を「解雇をなかったものとして取り扱い、現実に就労させなければならない」と変更した。

原状回復の方法として「現実の就労」を命じた点は大きな意義を有するものである。

5 速やかな職場復帰を求めて

2020年3月12日、元職場とは異なるが、組合員のうち1名が職場復帰を果たした。
会社が行政訴訟を提起しなかったため、中労委命令が確定した。
今後は、残る2名の職場復帰と争議の全面解決が焦点となる。

(弁護団は、豊川義明、谷田豊一、佐々木章、細田直人各弁護士及び筆者である。)